内容説明
うつろいゆく季節の匂いがよびさます懐かしい情景、日々の暮らしで感じたよしなしごとあれこれ―。うつつと幻のあわいの世界をゆるやかに紡ぎ出す、不思議の作家の不思議の日常。じんわりとおかしみ漂う第一エッセイ集。
目次
困ること
蛇や墓や
祭の夜
秋の空中
かばん症
豆腐屋への旅
あめつちにつづく道
丸四角
嫌
蹴ってみる〔ほか〕
著者等紹介
川上弘美[カワカミヒロミ]
1958年東京生まれ。80年お茶の水女子大学理学部生物学科卒業。82年より86年まで私立田園調布双葉中学高等学校に勤務。94年「神様」で第一回パスカル短篇文学新人賞を受賞しデビュー。96年「蛇を踏む」で芥川賞受賞。99年『神様』で紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、2001年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞を受賞
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感想・レビュー
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masa@レビューお休み中
125
よく作家が書いたものは小説しか読まない。エッセイは決して読まないという人がいるが、僕はむしろ逆である。好きな作家であれば小説だけではなく、エッセイでも解説でもなんでも読みたくなってしまう。エッセイを読むことで、その作家のことを知りたいと思うし、その人の片鱗に触れたいと思ってしまうのだ。はじめてのエッセイ集ということもあって、まだ色が決まっていない感じも面白い。ある方が、川上弘美は『心を空っぽにして読みたい』と言っていたのが、なんとなくわかったような気がする。川上ワールドは、かくも強力な魔力に満ちている…。2014/03/21
風眠
78
パソコン通信というものがある、と知ったのは小学校低学年のとき。当時の担任がパソコン通信が趣味で、小さな箱型テレビみたいなものと、今で言うPCのキーボードを机に置いていた。その時は、何度聞いてもパソコン通信の仕組みがわからなくて、そもそも概念も無かったので、頭の中が「???」状態だった。今ではメールやインターネットが当たり前になって、ぜんぜん不思議じゃなくなったな、世の中の進歩って凄いなぁ、何か色々思い出すなぁ・・・という感じで読んだ。川上さんって物静かな天然さん?何ていうか独特に理論的で、なーんか面白い!2018/03/27
おいしゃん
61
旅先で、電車に揺られながらのんびり読むのに最適な本だった。川上ファンとして、芥川賞受賞時の話や文章を書くようになった話などは特に感慨深い。2018/02/12
ヴェネツィア
56
筆者の最初のエッセイ集。1995年~99年にかけて、様々な活字媒体に書かれたもの。10数年前ということになるが、インターネット環境などは隔世の観がある。「ネットカフェ」は「エロクトロニックカフェ」と呼ばれていたなど。エッセイなのだが、掌編小説の趣を持ったものもあり(「秋の空中」など)、川上ワールドが楽しめる。また、この人の文章は、こうしたエッセイでも独特なものがある。例えば「風邪をひいた」というところを「感冒を得たのであった」と書くのだ。まるで風格のあるオヤジみたいだが、彼女の文章はかくまで論理的なのだ。2012/09/26
あつひめ
51
小説のようなエッセイ。川上さんの見る商店街や公園・・・どれもが日常を通り過ぎて架空の場所なのではないかと思ってしまうほどきれいにまとまっている。短いものはページをめくったらすぐに終わりでえ???ってものもあったけど・・・。川上さんが小説を書き始めたきっかけや、書いたものをコピーして郵便で知り合い送った・・・なんてことを読むと、作家になる運命の人だったのかも・・・と思ってしまいました。通勤時間、仕事の休憩時間に読みましたが気持ちをほぐしてくれる作品でした。2011/12/25