内容説明
エカテリーナはクーデターで夫の皇帝を追放、学校や美術館を建て啓蒙君主として君臨する。立ちはだかる列強と覇を競い合い、領土拡張に奔走する彼女の褥には、若い男の影が絶えない。女帝の劇的生涯を活写する大作。
目次
フランス人とトルコ人
大公の結婚
ディドロとプガチョフ
ポチョムキン
エカテリーナ大帝
ランスコーイ
クリミア旅行
戦争
ズーボフとポチョムキン
ポーランドとフランス
最期
著者等紹介
トロワイヤ,アンリ[トロワイヤ,アンリ][Troyat,Henri]
1911‐。フランスの作家。モスクワ生まれのロシア人で、幼時、革命を避けてパリに移住。処女作『ほの明り』でポピュリスト賞、1938年にはサルトルの『嘔吐』と争い、『蜘蛛』でゴンクール賞を獲得
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感想・レビュー
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松本直哉
25
夫から帝位を奪った女帝にはじめは懐疑的だったのに、彼女から年金をもらうようになるとたちまち擁護派に転じるフランスの啓蒙思想家たちの浅はかさに失笑する。思想も哲学も金次第ということなのだろうか。啓蒙専制君主という名称そのものが矛盾概念で、自由も平等も口当たりのいい飾りでしかなく、女帝の本音は飽くことない領土拡張への欲望だった。ポーランドを分割し、ウクライナを支配し、クリミアを占領する。いまも続くクリミアとウクライナをめぐる争いの淵源は、この自信にあふれた派手好みのエカテリーナにあったのだと知る。2022/04/20
viola
5
エカテリーナの息子パーヴェルが結局誰の息子なんだろうか、いや、まさか本当に愛人の息子ってことはないだろう、これだけ夫にそっくりなんだし・・・・・と思っていたら、エカテリーナ自身が愛人の息子であると記していたのですねー。父親を自分が殺したと責められないようにとわざと嘘を書いたなんて説もあるようだけれど。内容的には、圧倒的に上巻の方が面白くて下巻は勢いが落ちてきてしまっていてちょっと残念。2012/08/12
しろうさぎ
1
上巻ほどドラマティックではないが、権力者の後半生は総じてこのような経過だろう。保守化、取り巻きのしがらみ、後継者育成の難航、老いに伴う判断力低下と不安の増大、等々。それにしても不思議なのはポチョムキンの人物像だ。同時代人の証言をいろいろ挙げているが、どれも相反する特徴の羅列で、同一人物としてイメージ出来ない。これを作者は「骨の髄までスラブ人」とまとめてしまう。確かに舞台となるロシアの国民性や文化も、依然として謎めいたまま。これを機にもう少し勉強してみよう。2019/01/30
unpyou
1
エカテリーナがクーデタによって帝位についてからようやく勢い付く、大河歴史小説。啓蒙専制君主の代表的存在であり、ヴォルテールと文通する合理派でありながら、プガチョフの乱のようなアジア的現象の前に戦慄を覚えてからは理性に対する圧政を事とし、啓蒙思想を憎悪するに到る。矛盾の塊の如き君主の肖像がむしろ人間的であるとも言え、興味深い書。2011/08/17
ちるちる
1
ドイツ女性でありながら、才智と努力によりロシア女帝として君臨したエカテリーナ。啓蒙思想を理想とし、その判断力・実行力で難題を次々とクリアーする。しかし、晩年は前女帝と同じような道をたどり魅力は半減。にしても、強い女性である。2011/02/10