内容説明
「共通口語」を発明せよ。明治七年、文部官僚・南郷清之輔は「全国統一話言葉」制定を命じられ、まず家中から口語の統一をこころみる。しかし南郷家はお国言葉の坩堝。清之輔は長州弁、妻と舅は薩摩弁、使用人たちは遠野弁に津軽弁、江戸武家言葉に町言葉。単語のちがい、異なる発声。屋敷中は大混乱に…言語と近代国家の奇妙な緊張関係を、ユーモラスに描いたテレビ版戯曲、文庫初登場。
著者等紹介
井上ひさし[イノウエヒサシ]
1934年(昭和9)年、山形県に生まれる。上智大学仏語科卒。「ひょっこりひょうたん島」など、放送作家として活躍後、戯曲・小説の執筆に専念。72年、「道元の冒険」で第17回岸田戯曲賞、「手鎖心中」で第67回直木賞、80年、「しみじみ日本・乃木大将」「小林一茶」で第31回読売文学賞、「吉里吉里人」で81年、第2回日本SF大賞、82年、第33回読売文学賞、91年、戯曲「ジャンハイムーン」で第27回谷崎潤一郎賞を受賞
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
221
井上ひさしにはやや珍しいタイプの悲喜劇。明治新政府による方言の統一と「国語」の創設をテーマにする。たしかに江戸時代以前は、方言ではなく「お国言葉」がそれぞれの藩内で話されていた。それを統一するのは国家的要請だっただろう。とりわけ、それを必要としたのは上意下達の軍隊である。家庭劇の中に薩長、江戸、東北各地、はたまた会津や京都、名古屋の言葉が縦横無尽に入り乱れて展開する。とりわけ、褌のくだりなどはもう抱腹絶倒、井上芝居の真骨頂だ。ところが幕切れは、まるでコスタ・ガブラスの"Z"を想起させる寂寥感に包まれる。2015/06/27
keroppi
83
この本も、世田谷美術館の講義の中で出てきて読みたくなった本。明治初期、全国統一話言葉を作るように命ぜられた男のユーモアたっぷりのテレビ版戯曲。日本中の方言が飛び交い、その誤解や思惑が入り混じり大混乱、抱腹絶倒。吉原のオイラン言葉まで登場し、言葉というものの深さや大切さも感じる。私も故郷を離れて50年程経つが、今でもふとした拍子に方言が出てしまう。方言は、愛すべき言葉なのだ。このテレビドラマ見てみたいなぁ。2023/04/27
とまと
17
ドラマの脚本。時は明治の初め。主人公は、全国統一話し言葉を作るよう命を受ける。彼の屋敷には、それぞれ異なる方言を話す者が10数人集まっている。主人公は、それぞれの方言を観察したり、維新の大業やオイラン言葉に注目をしたりと、四苦八苦して、「文明開化語」を作り上げるが…。異なる方言を話す者の間に起こるディスコミュニケーションは、読んでても笑えるし、テレビで見たら楽しいだろうと想像できる。公家や強盗の役回りも面白い。ドラマで見たらもっと面白かっただろうな。2013/07/09
あかくま
15
このドラマ、昔オンエアされたときに見ている。今、台本の形で読んでも、やはり面白い。本書の時代の後、教育現場を中心に、方言撲滅運動が起こり、方言を使うと首から反省札を下げさせられた、というファシズム的な事も行われたと聞いたことがある。それを思うとき、井上ひさし氏が本書にこめた、言葉への深い洞察と愛情に、胸が痛くなってくる。昨今のドラマを見ていると、方言が面白い個性として捉えられているようだ。それはそれで悪くはないのだが、もっとお国言葉は深いアイデンティテーを伴うものに思われて、見ていて違和感がある事が多い。2013/07/11
キンとギン
13
知人から面白いと薦められた本。全国統一言葉の作成を命じられた役人のドラマ脚本。・・・題材としては興味深いのですが超絶読みづらく、ドラマか舞台で見ないと私には良さがわからないようです。2016/10/25
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