内容説明
十九世紀末、先進、躍動、享楽、芸術、退廃が渦巻く幻想都市パリ。熱烈なる十九世紀愛好家である鹿島教授が、その風俗・事象の変遷を、パノラマ風に紹介する。サン =シモン、フーリエのユートピア思想にも言及しつつ、ノスタルジー溢れるパリと現代のパリが交錯する刺激的エッセイ。写真・図版百余点収載。
目次
第1章 世紀末パノラマ館(パリ万博;電気照明;地下鉄 ほか)
第2章 橋上のユートピア(ヘンドリック・モマーズ「ドフィーヌ広場の入口から眺めたポン=ヌフ」;ラグネ「ノートル=ダム橋とポン=ト=シャンジュの間で行われた船乗りたちの水上槍試合」 ほか)
第3章 失われたパリを求めて(ルーヴル;オペラ座;バスチーユ広場 ほか)
第4章 快楽の共産主義(サン=シモン、フーリエの思想;人類の目的は「生産」―サン=シモン;すべての欲望を解放せよ―フーリエ ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
281
鹿島茂氏の本は初読。題材からは、どうしても澁澤龍彦と比べてしまう。お二人とも東大の仏文のご出身でもあり、着眼や指向性は似ているように思う。ただ、澁澤のいい意味でのペダントリーが、ここでは控えめだ。第1章と第2章で、それぞれの項目が短か過ぎることもある。その代わり、各項に添えられた19世紀の写真や絵は随分と魅力的だ。また、本書を読んでナポレオン3世に対する見方が変わった。鹿島氏名付けるところの「皇帝民主主義」という視点は新鮮だった。その代わりにオスマンの評価は下がったのだけれど。パリ大好き熱に捕らえられる。2014/05/08
ごへいもち
24
いつも気楽に読めて面白い鹿島茂の本。 この本は 女性誌の「マリ・クレール」から地方紙・日経新聞と 著者の広範な守備範囲のあちこちで発表したものをまとめたものだそうだ。 この人がいなかったら 私はフランスの歴史には全く興味を感じなかったと思う。 特に19世紀とか… 著者の莫大な借金の元になった19世紀ごろの挿絵やカタログが この本にふんだんに使われているのかも、と思うと 購入したそれらが少しでも元が取れたのかなぁと思ったりした。(コメントに続く 2012/03/24
モリータ
9
さすがに一気に三冊も読むと重複もあるしパリになじみが出るほどフランスに行けるのが羨ましくもなるけど、19世紀の名残りが街角にあるかもしれないと思うと楽しみ。対比できるほど東京・京都・大阪のことを知っているわけではないのが自分としては残念。2015/03/11
H2A
9
どこもそうだが、第4章がいつもの鹿島氏らしからぬ題材だし内容もおもしろい。「空想」社会主義者サン・シモンはともかく、フーリエなんて日本でもそんなに読まれているだろうか。奇矯な思想で、その「情念引力」という言葉は、確か後の著書でも使っていた。雑多なテーマを書き散らしているようで、鹿島氏の著書にはほぼ共通した感性がある。2014/03/04
ふろんた2.0
8
序文で社会的インパクトのあるという意味での世紀の変わり目は15年ほど遅れてやってくると。…今年ではないか。2015/02/10
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- 和書
- 神様のカルテ 〈3〉