内容説明
大仏次郎『赤穂浪士』、土師清二『青頭巾』、直木三十五『南国太平記』、中里介山『大菩薩峠』など、大衆文学史上の問題作を俎上にのぼせ、時代考証の立場から斬りまくった。当時の流行作家は、江戸のお目付役鳶魚を恐れると共に彼の著作を必読文献とした。大衆文学に大きな影響を与えた鳶魚の労作。
目次
大仏次郎の『赤穂浪士』
土師清二の『青頭巾』
直木三十五の『南国太平記』
白井喬二の『富士に立つ影』
長谷川伸の『紅蝙蝠』
吉川英治の『鳴門秘帖』
林不忘の『大岡政談』
中里介山の『大菩薩峠』
佐々木味津三の『旗本退屈男』
子母沢寛の『国定忠治』
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旗本多忙
17
出鱈目にも程がある。とでも言いたいのだろう著者は。大佛次郎「赤穂浪士」から子母澤寛「国定忠治」まで文豪の10作品の小説に異を唱えている。時代考証があるんだ、何でも書けば良いというものでもなかろう。見たこともなければ、聞いた事もないような語句をやたら書きまくる。将軍から老中、大名、旗本から浪人に商人に岡っ引き、礼儀や作法、しきたりに慣例など全てに至るまで、トンチンカンのことを書いている、と憤慨する鳶魚氏。言われて見ると成る程と頷くものの我々読者も知らないのだ。この評判記の指摘が無茶苦茶に笑えたのが面白い。2023/06/21
koishikawa85
3
本のコンセプトは実に面白いと思うのだが、何にしろ解説が不親切。こういう言い方はしない、と指摘するなら、どう言えばいいのか教えてほしいのにその記述がない。ネチネチと細かい指摘につきあっていくことになる。もう少し書き方に工夫ができたものだろうと思う。最初の南国太平記までで読了放棄。2022/05/29
えぬ氏もわるよのぉ
1
戦前の本だが江戸時代を研究する著者が時代小説の考証の誤りを遠慮えしゃなく指摘しまくる。例えば旗本退屈男の「無役なれど直参旗本」という映画でもおなじみのセリフ。無役は小普請組のことだし旗本は直参に決まってるからわざわざ付け加える必要なしとのこと。言われりゃ確かにね。他にも事細かに指摘されてるが、他の作品はともかく、旗本退屈男は荒唐無稽だから面白いんであって、読むほうもそれはわきまえるべき。あれを考証に忠実だと思うなら、そっちのほうがどうかしてるよね。2018/06/28
司
1
『大菩薩峠』『旗本退屈男』などがいかにいい加減な知識で書かれたものかを鳶魚先生が怒りに震えながら書いています。 まだ時代考証が無かった時代の小説だからね・・・。2011/07/08
カレー
0
言葉遣い、服装、法制等、「この時代にありえない」とめった斬り。しかし、三田村先生の指摘を受けないくらい細かく調べていたら何も書けないのでは…。2013/05/04
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