内容説明
江戸初期、紫衣事件で幕府の宗教政策を批判して出羽上山に配流され、のちに三代将軍家光の帰依を受け、品川に東海寺を開いた臨済宗の名僧沢庵―。権力と仏法のはざまを生きた禅僧の内面に分け入り、七十三年の波瀾に満ちた生涯を克明にたどる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アンパッサン
2
宗祖たちがみな質素に生きてきたが、沢庵には環境がそれを許さなかった。もちろん避けようとはしたけど、政治のど真ん中みたいな場所にいては受け入れざるを得なかったのではないか。紫衣事件で一度真っ向からぶつかっていったところに彼の性根をみた気がする。三年の蟄居の末、彼が傑物だと知っている柳生や小出、家光たちに再び呼び戻され最後には品川東海寺に落ち着いたんだろう。投げ出したくても投げ出せないものを抱えて御坊は最後まで生き抜かれた。山田風太郎に出てきたエピソードが書かれてあり、ああこれが元ネタかと満足。2021/06/04
はちめ
1
三部作の最後の作品ではあるが相変わらず引用ばかりで著者の意図が感じられない。しかし、それにしても、経も読むなというのはどういうことだろうか。大悟においてはお経も不要ということか?2015/11/19
スズマヨ
1
普段は柳生さんがよくでてくる本を読むので、作者の熱い石田三成推しがとても新鮮だった。ただ、沢庵さんの禅宗からくる反骨精神と重ねる描写は、行き過ぎると万にひとつも勝ち目がないのに徳川家康に立ち向って結局負けちゃった石田さん、みたいな感じになってそれはそれでどうかな、と思いました。沢庵さんの生きざまをみると、不可分にある政治と宗教という関係のなかでいかに純粋に宗教をやっていくか、という事を実践していた人なのかなーと、すこし「玄奘西域記」というマンガを思い出しながら考えました。2014/11/08
おみそそ
0
不動智、素晴らしい。権力に媚びず雲のように水のように、優しさと思慮深さ、ああなりたい。2017/03/12
でろり~ん
0
水上勉は一休、良寛、沢庵と三人の坊主を中公文庫で書いている。自身も坊主であったわけだから、禅の先輩に対する興味があったものか、編集者の企画に乗ったものか、わからないが、いずれも丁寧に書いてはいるが、臍のない書物になっている感がある。 徳川初期の世相を記した物としては、もちろん作者の考えを反映したものになっていることは避けられないが、一級品であろう。 それにしても後代に名を残している人というのは、身分や職業によらず、誰もが変わり者である。変な奴、エライ! のかなん?2015/01/01