内容説明
北海道日高山脈―原生林が息づく北の奥地は、かつて人とヒグマの壮絶な対決の場でもあった。悠久の大自然に展開するヒグマとの死闘を、自らが生きた時代の証言として物語る、戦慄の回想録。
目次
1 出会いと別れ(父は走った;舞茸採り ほか)
2 撃つ(少年猟師;待ち伏せ ほか)
3 アイヌの猟師(金毛;風雪;猟師)
4 流転(暗い春;睨み合い ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ach¡
35
実体験が基になっているだけあって羆の恐ろしさが余すところ、ぢゃなくて…もうこれ本からハミ出ちゃってますな。クマ牧場で嗅いだ羆の芳香が漂ってきたもの。(絶対に安全な場所から眺める姿は愛らしい、でもその大きさにはビビるです)ここに登場する羆は完全に野生なわけで、死闘を繰り広げた末亡くなった方の証言なんかもあるわけで(( ;゚Д゚)))著者自身も幼い時から羆と対峙しておりその臨場感たるや…チビる~るるる。年に何度か羆が目撃される場所(といっても山奥ではないw)に暮らす身としては…ことさら試される大地に畏怖ブル2016/02/05
まさ
25
リモートで物事が進む時間が多いから、なおのこと五感の経験を身体が欲しているのかもしれない。久しぶりに読み返したのはその表れかな。帯では、人とヒグマの死闘―としているけど、そんなことよりも何よりも、大自然の中に身を置きたくましくも淡々と日々生きることを本を読みながら実感できる、それで十分。2022/01/29
のぼる
21
幼少期からの羆との関わりの回想。 穏やかな文章で淡々と書かれているが、実際の現場はそんなものではなかっただろう。小2の頃の羆との初めて遭遇も、想像したら怖くて怖くて。2017/12/16
わっぱっぱ
18
帯には「戦慄の回想記」と銘打たれていますが、確かに。 何が戦慄って、著者をはじめ山に暮らす人たちが狩猟を楽しんでいるところです。羆の恐ろしさを十二分に解った上で挑む、その命のやりとりが日常の風景として綴られているところが却って恐怖。 しかしこれこそが本来の生活なんですよね。今の私たちは「殺す」ということから余りにも遠ざかってしまった気がします。それだから「生きる」ことまでなおざりにしてしまう。 躍動する生命を見る思いで読み、今は無性にサバイバりたい気分。2016/12/20
おにぎりの具が鮑でゴメンナサイ
9
釣り人や山野愛好家など一部の方面には知る人ぞ知るらしいのだが、このカテゴリでこれほどに素晴しい本があろうかとまさに驚嘆した。著者についての資料は多くなく、幼少から青年期に道東から日高へ移り住んで猟を覚え、その後長らく炭鉱に勤めてから知人と土木会社を設立し、晩年に交通事故に遭い身体が不自由となったことを機に筆をとり3冊ほどの著書を残されている。自らの体験と老練な猟師達から集聞した貴重なエピソードは圧巻だが更に驚くのは卓越した文章力で、昨今の売文屋など太刀打ちできぬ優美なる筆力にただただ感服するばかりである。2015/11/16