感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
17
窯変は帝の権力よりも皇后に付随する執政権力としての光源氏を描いていて、今まで読んだ中では特異だ。桐壺帝は悪帝として光源氏の父であったのだ。それは藤壺との間違い(摂関政治の上では間違いであって、それ故に光源氏も過ちに導かれることになると考える)。正しいのは弘徽殿女御の方であったのだ。ただその反逆者としての光源氏は悪の力を得て返り咲いたのは事実であった。そこで桐壺帝の呪いを払う儀式を行う。なによりも明石の君に娘を産ませたことで帝よりも強い力を得たと気がつくのであった。橋本治の源氏物語は権力闘争の物語だ。2024/03/19
LUNE MER
14
弘徽殿女御の人物解釈が今まで読んだ現代語訳・リライトの中で最も興味深く、漠然と抱いていたイメージが随分変わった。夕顔の時もこんなにチャーミングな女性だったのかとかなりのイメージ刷新。原文を確認したら確かにそんなくだりがあったことを改めて気づけたり。さて、「須磨」「明石」ということで明石の君の登場ですが、六条御息所との類似性が強調された描写となっている。え?と思って原文を確認したところ、確かに雰囲気似てると光源氏が述懐してる箇所あり。原文ではサラリと書いてあるだけだが、その矜持の高さと妖艶さでの類似性が2021/08/03
NY
9
源氏の自分語りによるくどさを、惟光の的を得たボヤキ「ほらまた悪い癖が始まった…あの方はいつもそうなんだ。昔からずっとそうだ…(明石)p273」がフッと和らげてくれた。それにしても、源氏物語を、原作の在り方と全く異なる、一人称の近代心理小説に書き換えながら、原作で描かれたこと(天皇、貴族社会、政治、家、男女の関係が、どのような「理」で動いてるか、だと思う)を精緻に書き込んだ(和歌の説明も!)、橋本治の底なしの博識と根気に敬服。ただ、長すぎる…20年前は14巻読みきったが、今回は一旦お休みします…2020/05/06
Jack Amano
4
皇太后(弘徽殿の女御)に嫌われた光源氏が都を追われて、明石へ。そこでも、なんだかんだと理由を付けて女性のもとへ。そして、子どもももうけてしまう。帰京の命が出て都に戻ると、正妻である紫の上に、開き直って「邪推するな」仕方ないし、あなたの方がずっと素晴らしいと、言って弁解したりする。現代に焼き直してドラマ化したら、本当にしょうもない女たらしでしかないかも。途中で彼のやっていることを他の男が、別れる段になって、誠意をつくして通ったりするから、捨てられる女は未練が残る。酷いやり方だと評した。賛同。2024/04/04
みほ
3
澪標がこんなに面白いとは。『私にとって彼女は母』という解釈は斬新で凄い。2013/12/06