感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
18
窯変は帝の権力よりも皇后に付随する執政権力としての光源氏を描いていて、今まで読んだ中では特異だ。桐壺帝は悪帝として光源氏の父であったのだ。それは藤壺との間違い(摂関政治の上では間違いであって、それ故に光源氏も過ちに導かれることになると考える)。正しいのは弘徽殿女御の方であったのだ。ただその反逆者としての光源氏は悪の力を得て返り咲いたのは事実であった。そこで桐壺帝の呪いを払う儀式を行う。なによりも明石の君に娘を産ませたことで帝よりも強い力を得たと気がつくのであった。橋本治の源氏物語は権力闘争の物語だ。2024/03/19
LUNE MER
15
弘徽殿女御の人物解釈が今まで読んだ現代語訳・リライトの中で最も興味深く、漠然と抱いていたイメージが随分変わった。夕顔の時もこんなにチャーミングな女性だったのかとかなりのイメージ刷新。原文を確認したら確かにそんなくだりがあったことを改めて気づけたり。さて、「須磨」「明石」ということで明石の君の登場ですが、六条御息所との類似性が強調された描写となっている。え?と思って原文を確認したところ、確かに雰囲気似てると光源氏が述懐してる箇所あり。原文ではサラリと書いてあるだけだが、その矜持の高さと妖艶さでの類似性が2021/08/03
NY
10
源氏の自分語りによるくどさを、惟光の的を得たボヤキ「ほらまた悪い癖が始まった…あの方はいつもそうなんだ。昔からずっとそうだ…(明石)p273」がフッと和らげてくれた。それにしても、源氏物語を、原作の在り方と全く異なる、一人称の近代心理小説に書き換えながら、原作で描かれたこと(天皇、貴族社会、政治、家、男女の関係が、どのような「理」で動いてるか、だと思う)を精緻に書き込んだ(和歌の説明も!)、橋本治の底なしの博識と根気に敬服。ただ、長すぎる…20年前は14巻読みきったが、今回は一旦お休みします…2020/05/06
maekoo
9
今までにない深掘昇華の各巻4~500Pの源氏物語現代語訳全14巻の四巻、花散里・須磨・明石・澪標を描く。 ここでも原作の内容を膨らませ、兵部卿の宮の北の方の罵りや、都に残った紫の上の試練と成長、筑紫の五節の舞姫との遣り取り、明石の入道と妻の尼との会話、須磨の嵐の描写、明石の君や朱雀院の解釈と造形、弘徽殿の皇太后の正論、そして明石に乳母として送る宣旨の娘との細かい描写、位が上がり若気の至りが遣り難くなった光等々、他の現代語訳に無い面白さが有る! 原作の精神性を美しい日本語で著した文学的表現で読ませてくれる!2025/09/10
みほ
4
澪標がこんなに面白いとは。『私にとって彼女は母』という解釈は斬新で凄い。2013/12/06




