内容説明
五・一五事件より終戦まで、歴史の綾にまといつかれたひとりの少女の魂の形成を描く物語。家庭、交友、縁談、冒険心など心の遍歴をつぶさに描いた長篇自伝の青春編。昭和秘史に新しい光を投げかける問題作。
目次
北の南の人
つゆ冷え
問い
借翠宝蘭亭斎
日記の周辺
青い手紙
判決
夏の客
熊と切手
楽学(幕間のとき)〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨーイチ
37
登録漏れ。上巻とも言える「花々と星々と」のコメントをアップした際、下巻も含めた気がしていて疎かになったみたい。さりとて大事な一冊は記録して置きたくて登録。何回か読んで分かったのだが、時代別に章立てはされているが、其々に中心となるべき人物がおり、その関係性とか描写が実に巧みで面白い。上巻では幼い頃故、父母、祖父母、親戚関係が一通り出てくる。この巻のトップを飾るのは、祖父毅が庇護していたヴェトナムの王子・コンデ侯。殆ど無名だが興味深い人物紹介から祖父犬養毅の政治家としての立ち位置が見えて来る。続く2020/07/18
しんた
12
戦時中の政治中枢にいた娘さん視点の話。515はサラッと流してその後の家族と思春期の葛藤が描かれており、かなり読みにくい。戦時も戦後もかなり裕福な生活のようで、いつもの戦争作品とは視点が違う。まだご存命なのをwikiで確認。2016/09/04
なつめ
7
五・一五事件で暗殺された犬養毅の孫娘の自伝。昭和史に残る偉人の別な顔が、多感な少女の視点から観察されていて興味深い。なにかを成そうとして足掻いている人におすすめの一冊です。2010/03/09
Eiko
4
実家から借りて久々の再読。犬養道子さんの作品は私が幼いころから手の届くところに常に何冊かあったので、昔から知っている人のような気がします。この本は著者が11歳のときの五・一五事件、つまりはこの方のお祖父さまの死から、二十代始めに至るまでの「心の遍歴と形成過程」(作者あとがきより)。ごく近い位置にたくさんの政治家がいて、幼いながらにその人となりを「見てきた」少女の視点は歴史家の机上の著書よりもずっと奥行きが深く、読んでいる人の心の真ん中に訴えかけてきます。この著者の作品を読むたびに、勉強しなきゃと思います。2017/04/01
なかがわみやこ
3
続けて読むと感慨深い。現在の日本で、自分以外のために何かを成そうとする10代がどれくらいいるだろうか。2010/03/11