目次
第1章 この文章読本の目的
第2章 文章のさまざま
第3章 小説の文章
第4章 戯曲の文章
第5章 評論の文章
第6章 翻訳の文章
第7章 文章技巧
第8章 文章の実際―結語
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
371
三島による、読むための技術指南書だ。分析的に小説や戯曲の文章を読もうと思うならば、得るところは多い。三島は小説の文章の理想として、両極にある鷗外と鏡花を挙げる。すなわち、抑制の極と色彩の氾濫である。そして私には三島の文体はその両方の要素を併せ持っているように見える。また、彼は日本には真のロマーン(長編小説)は存在しないと語る。してみると、三島晩年の『豊饒の海』は、そのロマーンへの挑戦であったように思われる。戯曲の文章にも言及しているが、ここにもまた三島は『サド侯爵夫人』等で見事なまでの成果を残している。2016/09/19
かみぶくろ
81
「水が来た。」こんな簡素で明晰な鴎外の文章を、華美で丹念で装飾的な文章を書く三島が一つの極みとして絶賛していることに新鮮な驚きを覚える。一方の極みには泉鏡花で、これはなんとなく納得。三島自身は、古典的教養に裏打ちされた、格調と気品ある文章こそ目指している最上のものと明言しており、確かにその通りの一貫した作家生活を全うしている。あの三島がどんな思いで執筆しているかが垣間見え、一読者として大変参考になった。中村文則さんとかを読んでても思うけど、ぶれない自分の文体を持ち、徹底的に追究する作家の文章は、圧が強い。2015/03/15
馨
74
三島由紀夫教授の『文章読本』講座を大学で聞いているかのような本です。様々な作家の作品の一部を例に出して、わかりやすい。文章表現について沢山勉強出来て良かったです!三島由紀夫がかなり沢山いろいろなジャンルの本を読んできていて凄いと思います。また三島由紀夫が文章を書く時のことも知れて、今まで読んできた彼の作品の文体が美しい理由もわかり嬉しかったです。2015/03/22
たまきら
30
谷崎の文章読本がエンタテインメントだったとしたら、自分にとって三島のそれはナルシシズムにも似た、陶然とした理想論のように感じる。ストイックなような、なにかを禁じているような…。言葉という表現方法の中で、書き手がつくりあげる境界線と、そこを潜り抜け覗き込む読み手の技と…。ううむ、なぜこの人はこんなに自分の琴線に触れないのだろう。不思議だなあ。2019/02/16
galoisbaobab
30
ブンガクをホントウに楽しむには「文学というものが仮の娯楽としてではなく本質的な目的として実在する世界の住人」たるリズールになる必要があるよね、って意見には賛成。すべての作家は森鴎外(知的文体)、泉鏡花(感覚的文体)という2つの極の間に、それぞれ星座のように位しているって感じの物言いは三島由紀夫っぽくて好きだな。実際に引用しながら解説してくれるから読書欲が高まります。まだまだ読んでない本が星の数ほどある!2017/09/02