内容説明
現代では、人と人との繋がりが希薄になってしまった。人と人との間には、安全という名の距離ばかりが広がった。しかしその平和な時代に、人はどれだけ残酷な涙を流すことが出来るのか。それを1千年前に見据えてしまった女性がいる。その物語をもう一度、“豊か”と言われる時代に再現。最も古い近代恋愛小説の古典。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
17
天皇が太陽ならば光源氏は月。さらにその天皇の妻(義理の母)を愛してしまったのだから、欲望のはけ口は他にむかうしかなく、それが月影となって当時の女たちを照らす物語だったのが、月そのものの影の部分、つまり暗黒光源氏として描いている。闇堕ちしたダースベイダーかと思ってしまった。「若菜」でも「末摘花」でも本人は動かない。自分の思い(欲望)を伝えるだけ。それに右往左往する惟光だったり大輔の命婦だったりする。従者は常識人であるが王の命令は絶対であるわけでその非常識な命令とのやり取りが喜劇になっているから面白い。2024/02/25
LUNE MER
15
窯変ならでは、と特に強く感じたのは「末摘花」。「光る源氏の物語」でも述べられていた「『末摘花』のヒロインは姫君ではなく、男女として光源氏と微妙な距離感にある大輔の命婦である」という視点でリライトされており、個人的にはこの帖の新たな魅力を味わえた。光源氏と命婦の互いに気の置けないやり取りと、命婦の想いに気づけていない源氏の鈍さはドラマを観ているような感覚で、何より、命婦がこれまで読んだどの訳よりも魅力的。彼女がこの帖にしか登場しないのが勿体ないくらい。幸せな一生を送っていて欲しい。2021/07/12
NY
13
夕顔との出会い以来、様々な女たちとの関係に苦闘する光源氏はあたかも男の弱さを陳列したショーケースのようだ。それは恐らく「孤独」や「執着」に由来するものだろうが、簡単にそう言い切ってよいかは正直よくわからない。ところで「女の沈黙は男に対する最大の復讐」「女は悩んで悩まない。ただ蓋をするだけだ」など、随所に、二十年前につけた鉛筆の印があった。実体験の心当たりは何もないので、多分、当時の自分は、勝手に疑似体験というか、何となく恋愛がわかったフリをしたかったのだろう…やれやれ。2020/02/11
maekoo
12
今までにない深掘昇華した各巻3~500Pの源氏物語現代語訳全14巻の若紫・末摘花・紅葉賀を描いた第2巻! この3帖だけで417Pと読み応えあり! 原文や他の現代語訳を読んでいて何故そう思ったのか?・その言動の真意は?と言う部分を格調の有る文章を使って心理的な部分で深く表現し描写している為作品の世界観が深く心に響く! 半面、同等の身分や親しい間柄の人物間の会話がとても現代的でそれが又違和感なく読めて感情移入しやすい! 若紫との出逢いから一の院祝賀の青海波まで見所満載のエピソードを昇華させた深掘りで愉しめる!2025/08/27
みほ
4
どんどん面白くなる!末摘花の描写が容赦なく、光君の気持ちにびっくりする。男の価値観を再認識。性差をまざまざ見せつけられた感じだな。しかし、一番好きな六条のひとがなんと軽い扱いか。男からみたらこんな扱いとは、びっくりだ。男色の描写にもびっくりだし。がんばらなくちゃ、ダメだな。先は長い!2013/11/09
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