出版社内容情報
無頼の男の心中にふと芽生えた一掬の情愛――江戸深川の夜の橋を舞台に男女の心の葛藤を切々と刻む表題作ほか時代秀作自選八篇。〈解説〉尾崎秀樹
内容説明
無頼の男民次の心の中にふと芽生えた一掬の情愛―雪散る江戸深川の夜の橋を舞台に、男女の心の葛藤を切々と描く表題作ほか、多彩な人間模様を哀感こめて刻む自選傑作時代小説八篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
501
武家もの、市井もの、そして両方のいいとこ取りみたいな短編が混在する今作。中でもタイトルからしてヤバい『泣くな、けい』にはヤられた。これは男性からしたら夢のような作品。一方女性からしても、(途中ツッコミどころはあれど)身を挺してまでもこれだけ尽くせる相手に出逢えたら、と同じく夢を見させてくれる。冬の夜にはやはり、藤沢周平っちである。【海坂藩城下町 第7回読書の集い「冬」】参加作品。2021/12/22
ふじさん
86
表題作「夜の橋」は、博徒に溺れて女房と別れ無頼な生活を送っていた男が、昔の女房への愛を蘇らせ、人生をやり直すことになる。「泣きな、けい」は、主人に犯されながらも恨むことなく、主人の苦境を救う女中のけいを主人公に、主従の垣根を超えた絆を描いたさわやかな作品。他には、男女の心理のひだをさりげなく見事に描き出した「裏切り」、娼婦に身を落とし亡くなった姪の足跡を辿り、彼女をどん底の人生に落とした男をみつけ仇をとる「暗い鏡」。それぞれに独特の趣きがあり、その底には人間に対する深い愛と情、温かいん眼差しがある。 2021/03/16
やも
80
久しぶりの藤沢周平。やっぱりいい、押しつけがましくなく静かに余韻に浸れる読後感が好き。短編集でこの余韻はなかなかないよ。各話良かったけど、特にお気に入りは、別れた女房をまだ気にかけてしまう男の勝手ぶりが可愛い【夜の橋】、娘の時期が終わった事に気付いた空虚感が寒々しい【冬の足音】、初恋が実らなかった理由を知って別の世界が見えてきたような【梅薫る】、ビビりで情けない孫十のユーモアが面白い【孫十の逆襲】、もう話すことも出来ない姪への鎮魂の優しさがある【暗い鏡】かな。2025/05/01
ふじさん
79
「夜の橋」は、博打に溺れ女房と別れて無頼な生活を送る男が、昔の女房への愛を蘇らせ、人生をやり直す。「泣くな、けい」は、主人に犯されながらも恨むことなく、主人の苦境を救う女中けいを主人公に、主従の垣根を超えた絆を描いたさわやかな作品。「孫十の逆襲」は、雑兵の経験がある孫十が、村人と共に野伏せとの戦い成功するという、異色の作品。「暗い鏡」は、娼婦に身を落とし亡くなった姪の足跡を辿り、姪をどん底の人生に落とした男をみつけ仇をうつ。それぞれに独特の趣きがあり、その底には人間に対する深い愛と情、温かい眼差しがある。2025/04/01
みゆ
70
久々の藤沢さん。短編9話、武家物と町人物が半々。町人物の方が心に響いたかな。別れた女房と元鞘の『夜の橋』と疎遠だった姪の最期を辿る『暗い鏡』がお気に入り♡♡ 藤沢さんには武家の静謐なイメージが強かったんだけど、人情物もイケますね('∇^d)☆!!2025/05/12