内容説明
古代史の再検討を通して次々と大胆な問題提起を行い、「梅原日本学」を展開してきた著者が、アイヌと沖縄の文化の中に日本の精神文化の基層を探る。日本人の「あの世」観の基本的特質が、生命の永遠の再生と循環にあることを明らかにし、併せて人類の文明の在り方を根本的に問い直す日本文化論集。
目次
世界の中の日本の宗教―日本人の「あの世」観
甦る縄文
日本語とアイヌ語は異言語か
基層文化としての沖縄文化
原古事記と柿本人麿
人麿をめぐる『万葉集』と『古今集』
新しい時代を創造する賢治の世界観
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
17
あの世とこの世の循環に仏教と神道の融合をとらえているのはわかりやすいと感じました。表題作以上に縄文とアイヌや万葉集と古今集の話は面白かったです。2021/04/03
ヴェルナーの日記
5
著者は、日本における屈指の哲学者。本作は、古代日本民族のルーツを縄文・狩猟時代におき、東北人(蝦夷人)・アイヌ民族を基と考察する。アイヌ言語と大和言語の共通点を拾い出し、丁寧に解説している。従来の主流を占める柳田説や金田一説に疑問を提示して、独自の説を論説している内容に好感が持てた。古代史や歴史学等々といった学問は、極めて保守的で、新しい学説を取り入れない姿勢には、不快感を感じていた中で、本書を読んだことは、大きな収穫であった。2014/07/18
水戸
2
論文集。なるほどなぁ、となったり、へー、となったり、ちょっと難しくて読み直すものもあったり。そういう捉え方をするんだなぁとか、そんな捉え方をしていたんだなぁ、なんてところが面白かった。2022/10/23
ユウキ
2
刊行は1989年。原論文の雑誌発表や講演録はおおむね80年代前半。梅原が躍起になって稲作文化偏重の従来説をなぎ倒そうと奮闘した時期の著作で非常に面白い。しかし今になって読み返すと「基層文化としての縄文」という考え方はたしかにある程度説得的だと思うが、逆に言えばそこばかりをクローズアップしすぎているような気がする。さらに基層文化という言い方も気になる。本当に沖縄=アイヌ=日本の基層文化と単純化してしまっていいのか。読み終わるとモヤモヤした気持ちがさらに大きくなった。2018/02/11
thugu
1
【要約】日本人の日常的宗教観は、人間と衆生がこの世からあの世へ行き、またあの世からこの世に戻るというような循環である。前者は仏教が、後者は神道が担う。この考えは、縄文(狩猟採集民)をルーツとするであろうアイヌの価値観と似通っている。梅原は、縄文が日本文化の源泉と考える。 【所感】エスキモーのあの世観と日本のあの世観が似ていると思っていたが、それはどちらも狩猟採集民をルーツとしているからだったのかと思った。アイヌ研究をもっと読みたいし、縄文時代の世界観が残る東北地方を表現した宮沢賢治の作品も読みたい。 2020/01/26