内容説明
ポスター、映画、コマーシャル・フィルム、そして絵画。開高健の渉猟する世界は、その貧欲で執拗な視線にさらされ、多量の比喩、熱情を注がれて表情を一変させる。言葉との格闘によって意味を与えられた世界―。開高健が1つの時代の類いまれな眼であったことを痛感させるエッセイ42篇。
目次
ポスターのことなど
危険な野立看板
ポスター画家礼讃
賢明な様式化―映画『楢山節考』
マスコミ雑感
生きていないロルカの味
『U.S.カメラ年鑑・1959』
真鍋博著『動物園1』
アニメーション映画寸感
毛利武士郎
漫画家よ、笑わせてくれ
モーリス・ユトリロ
知られざるゴヤ
祈りなき大地の痛苦―ゴヤ
“大いなる自然”の死―ジャン・ギャバン
ピカソはほんまに天才か
うたかたのシャンソン〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
奏市
14
なんとなく開高健に興味持ち、読みかけの酒に関するエッセイが面白くもあり、古本屋でたまたま目につき本書買ってみた。軽いエッセイかと思いきや、途中何言ってるのかわからない部分あったり、表現難しかったりでなかなかに読応えあった。絵画、CM広告、アニメ、漫画、写真、映画に関する評論、エッセイ。表紙裏の写真がかまいたち山内そっくり。口悪く権威者に尽く突っかかていくのが気持ちいい。周りは敵ばっかりだったろうが、お構いなしの肝の座り方が見事。ゴヤ、ユトリロ評が興味深かった。「ゲップが出るほど古いこと」ってどういう表現?2021/06/26
Satoshi
11
芸術に関するエッセイ集。文章は武骨で飾らない。60年代での批評となるので、現在では名作とされる作品に容赦なく切り捨てる。渚にてで描かれる核戦争も広島長崎を経験した日本人にはリアリティーがない。こんな批評は戦争経験者しかできない。2022/08/04
さっと
8
開高健の芸術論。『衣食足りて文学は~』(文学論)と同じく文庫オリジナルで、デビュー間もない頃からの映画、絵画、広告等々に関する評論を集めたもので、批評の調子は文学論同様に饒舌で苛烈である。私は映画や絵画にはまるで疎いので、開高論に対して納得も反発もないのだけど、広告業界のはしくれにいるものとして、広告(商業デザイン)の何気ない一文にはハッとさせられるものがある。たとえば「テレビCFをつくるときの最大の前提はブラウン管の面積である」。流れ作業で安易な媒体選択になってないか。デジタル化の時代でもこれは効いた。2020/10/11
がんぞ
6
文庫独自編集、2頁以下の短文も含む芸術論42編。谷沢永一の解説が熱い。「開高健は自分の感受性しか信用しなかった」。複製でないルノワールを見た衝撃「今までの複製画集の印象は便器にながして」ヨーロッパ、米国の美術館、教会を渉猟した結論「真の芸術は押し付けがましくない」との実感からピカソを絶賛する常識に疑問を投げかける。ほか「ポスター画家だね」と一蹴されるベン・シャーンなどの作品中の「物語性」排除の風潮など/彼はメトロポリタン美術館のリキテンスタインの“コミックの一齣を拡大し彩色した”だけの作品をどう思ったか?2015/01/16
あかふく
2
普遍の拒否2013/05/05
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