内容説明
人生の悲しみを癒すものは何なのだろう。祖母の死に遭遇した日から、人は死ぬ日に向って行列していると怯える小学2年生。蛍のように短い生命を終えた少年。事業に失敗し、一家心中を選ぶ律儀な町工場主など。さまざまな死の光景を描いてなお深い慰めを与える、短篇名作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いっせい
65
地元の書店が掘り出し物フェアという催しをやっていて、そこに平置きされていた一冊。11の短編からなる小説集。それぞれの境遇で、「死」にどう向かい、どう受け入れるか?特別ドラマチックな展開があるわけでもない。あれ、ここで終わっちゃうの?と思う作品もある。でも、そこがいい。人間が死ぬという事は特別じゃない。生きながらにして常に向き合っているものだという事を、静かな余韻と共に感じさせてくれる。まさに、掘り出し物です。2022/07/30
あつひめ
58
死とは何か。裏返せば生きるとは何かを模索しながら生きることの苦しさや悲しさを考える課題を与えられた気がする。スマホもネットもない時代の中での生活は現代の若者では想像できないかもしれないが、その時代を生きた者にとっては懐かしい時間がそこには流れている。人は生まれた時から死ぬ日に向かって行列している…あー、私の思っていることを言葉で表してくれる作家さんに巡り会えた…と思った。心がざわざわしながら読み進めた。感想には賛否両論あったけれど、私の心にはじわっとしみてきた作品だった。2018/12/21
タツ フカガワ
50
11の短編はどれも20~30ページほどで、吉村さんと重なる作品や“死”をテーマにしたものが多い。なかで異色かつ印象的だったのが「位牌」。いまはともに故人となった父と従兄の父が芸者買いをしていたという20年前の思い出話を随筆に書いたところ、それを読んだ従兄の母が大荒れしているという。叔母さんを宥めるため駆けつける“私”。その顛末に思わず笑いが漏れる一編でした。そうそう獣医を主人公にした「指輪」も面白かった。2022/12/10
たぬ
29
☆4.5 1969年~78年に発表された11編。本当に吉村昭の短編は名作が多い。あとがきでご本人も書いているように長編とはまるで異質の世界。自身の体験や家族をモデルにした私小説でもまったくのフィクションでも、さりげない状況描写や贅肉のない会話が胸を打つ。死を主題にしたものでも読み終わると心が温まっていることが多いのはなぜだろう。2022/12/31
Shoji
28
11篇の短編が収録されています。いずれも死にまつわるお話ばかりです。遺族や近親者といった死者に関係した人々の、心の「ひだ」を描いています。どの作品も、滋味に満ちた心に染み入る作品でした。2023/11/04
-
- 和書
- 日本の広告研究の歴史