出版社内容情報
患者にとっての良い医者、医者からみた良い患者とは? 20歳からの大病の体験を冷厳にまたおかしく描き、医者と患者の良い関係を考える好エッセイ。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mike
81
大病を患った吉村氏が患者の立場から考えた事、出会って来たお医者さんへの思いを正直に書いた随筆集である。淡々として率直であり、どこか可笑しみが感じられる。結核を患い局部麻酔だけで5本の肋骨を切り取る想像を絶する手術から生還した吉村氏は、医学に対して深い敬意を抱いている。死から免れたのだから自分の体を大切にしなければお医者さんに申し訳無いと言う。そして好ましい医療は良いお医者さんと良い患者さんによって初めて成り立つという考え方に私は共感する。彼の誠実な人柄が滲み出ている随筆。私しゃますますファンになったぞ。2023/05/01
じいじ
75
吉村さんのエッセイは面白いです。三冊目のエッセイですが、読むごとに氏の人柄が分かってきて、どんどん好きになっていきます。吉村さんの病気歴は凄いの一言です。結核になった時は、抗生物質の特効薬もない時代でしたから…。そして見事に克服されました。ともすると「病」の話は、訊く方は辛くなりますが、文章力で面白く読ませてくれます。【禿頭に癌なし】の話は、もろ手を挙げるほど面白かった。私も酸素の力を借りようになって12年目。「へこたれるな!」と喝を入れられました。2023/05/14
タツ フカガワ
43
医学、医療を題材にしたエッセイ。吉村さんといえば20歳の時に肋骨5本を局部麻酔で切除する大手術を経験したことがよく知られているが、そんな人が化膿した指先を切開されたときや虫歯を抜かれたときに意識不明に陥った「意気地のない勇士だが…」や「禿頭に癌なし」という独自の説に笑いが漏れる話もあれば、「ルポ 動物実験の世界」や、日本初の心臓移植の暴走を問いかける「心臓移植私見」など、硬軟取り混ぜて読み応えのある内容でした。2023/02/02
Shoji
43
「この随筆集は、多くのお医者さんとの触れ合いをたどったものである」と著者が書き添えています。なるほど、どの章も医療に関することばかりです。医師のプライド、医師という職業の倫理、看護師の立ち位置、死と葬儀、告知の是非、戦時中の医療、衛生に関する事など多岐です。著者が大病を患って入院手術したお話と、作家に自殺が多いことを著者なりに考察しているお話が印象的でした。2022/01/10
KEI
35
吉村氏は戦後間も無く1年以上の生存率が40%という成功例が少ない胸郭成形術を受けておられる、それも局所麻酔で。それ故に医療に対する思いは強いのだろう。患者の立場から見た医療に関するエッセイ。戦前戦後間も無くの国民皆保険制度ができる前の医療の様子も垣間見られた。ユーモアもあり笑える。特に【もしも経歴書を書く必要が生じた場合には特技の欄に胃に胃カメラを入れること、腸も可と書こうかと思っている】や肝機能低下で酒を控えた時のご夫妻の会話が楽しい。「忍耐強いから貴方と30年以上いられた」と真似したい。2023/07/19