感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
20
ついに皇后になった橘嘉智子。しかし、彼女の手も血で汚れていく。この長い物語は、謀略と陰謀続きで救いがないが、この時期に鮮やかな文芸の才能をあらわした人たちがいることも、わすれてはならないだろう。2011/12/24
こぽぞう☆
19
上巻は月単位で進んでいた話しが、下巻では十年単位くらいでどんどん進む。藤原北家の地位の確立、最初期は天皇家に出す娘に事欠いていたんだなぁ。それがなければ橘家の娘が皇后になることもなかっただろう。2016/06/21
くっちゃ
8
薬子の乱を活用し、嵯峨帝にとって目障りな平城上皇を失脚させ、皇太子高岳親王を廃太子。従順な弟大伴を帝位につけ、北家と繋がった嘉智子所生の正良親王即位への足がかりを作る。しかしそれだけではなく、嵯峨帝の先妻高津内親王を自殺にまで追い込み、高志内親王、恒世親王、恒貞親王、橘逸勢、伴一族と数々の人間を陥れ、北家は隆盛していく。そして橘嘉智子も子供のため、遂には北家を利用してしまう。奈良末期から平安初期の宮廷内のなんと陰惨なことか。2017/12/02
しんすけ
6
檀林皇后私譜は承和の変の終焉とともに終わる。藤原良房の陰謀によって発生した冤罪事件とも云われる承和の変だが、この後の藤原氏興誠の歴史はここに起因する。結果は橘嘉知子の優位な結果、道康親王(嘉知子の孫で後の文徳天皇)の立太子に終わるが、敗者のなかには嘉知子の娘正子とその長男恒貞親王が含まれる。嘉知子と正子は実の母娘でありながら険悪な仲だったと伝えられるが、道康親王も恒貞親王も嘉知子にとっては実の孫である。複雑な心境の中に嘉知子はいたと思うのだが、作者はこのあたりを冷静に記述するだけである。2018/07/07
はるまさ
6
下巻になって、加速度的に次々に人が亡くなって(あるいは消されて)いく。藤原薬子、藤原冬嗣、平城帝、嵯峨帝、淳和帝、空海、橘逸成、そして檀林皇后…それぞれの死に方がそのままそれぞれの生き方を象徴しているようで、印象深かった。最後の最後で、橘逸成の嘉智子への想いが切ない。歴史小説としてずっと読んでいたけど、実はこれは屈折した形の恋愛小説でもあったのかな、と思った。Wikiを見ると逸成の娘が逸成の死後、尼になって父親の菩提を弔ったとあるけど、これはこの小説では愛瑛のこと、と思ってよいんだろうか?2013/07/08