感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
67
個性的な住人と、重厚で濃厚な人間模様。愛憎劇は日常茶飯事で、思想を巡り特高も”常駐”。羽根田家の子供たちが、様々な形で”緩衝材”となっている感。血なまぐさい大杉栄/伊藤野枝両氏の逸話は想定範囲も、高田保氏と女子美大生の”鏡”対決は笑う。対照的に、コンラド氏を始め海外著名人の品の良さも、どこかシニカル。なお、坂口安吾氏の手紙や、夢二の作品など、掲載された写真群も一見の価値アリ。2019/10/07
冬見
13
大正から昭和にかけて、初期には外国人を受け入れ、その後文士の巣窟と化した高級下宿・菊富士ホテルを舞台に繰り広げられる、大正文壇側面史。全身を文学の熱に犯された者たちの光と闇。大杉栄、伊藤野枝、竹久夢二、宇野浩二、広津和郎のエピソードが中心に語られる。個人的に記憶がごちゃついていた夢二周辺を整理できたのが良かった。宇野浩二ってこんなにだったのか……と衝撃を受けたのでこれを機に作品にも触れたいと思う。プロレタリア文学周辺もそろそろ整理したいなあ。他の作品同様、とても誠実に書かれているのが伝わってきた。良書。2019/05/04
kaoriction@本読み&感想 復活の途上
12
石川淳をして「尋常の下宿屋ではなかった」と言わしめる、本郷菊富士ホテル。尋常ではない・・・確かに。こんな下宿屋があったら、私のような人間は喜んで何年でも空きを待つかもしれない。瀬戸内晴美『鬼の栖』ではあまり語られていなかった作家人のことや、頭で思い描いていたホテルの平面図や見取図、本郷界隈の地図が楽しい。益々、住人になりたいと思う。女主人きくえのチカラと、幸之助の「まァええわな」のバランスがいい。そして、塔の部屋への興味は尽きない。そうか、小池とゆりは、この押入れで…と、日がな平面図を見て楽しんでしまう。2012/11/28
月
8
★★★★☆(外国人、文士、画家、思想家、俳優、学生等、色々な人々に愛され続けた本郷菊富士ホテル。コンラド、ネフスキー、大杉栄と伊藤野枝、谷崎潤一郎、竹下夢二、宇野浩二、尾崎士郎と宇野千代、広津和郎、石川淳、坂口安吾・・。関連本で既知の話もあるがとても興味深く、ホテルの見取図もあり分かりやすい。翻訳家の増富平蔵ほか本当に個性溢れる人々の巣窟だ。本郷菊富士ホテルは大正3年から昭和19年まで続いたが、創業者羽根田幸之助をはじめとする御家族の魅力、特に幸之助の妻きくえの魅力に集約されている。) 2014/02/26
リョウ
7
大正から昭和初期にかけて賑わった当時の高級ホテル。本郷という場所柄、様々な文人、学者などが長期滞在し、今でも名が残る人も名を残せなかった人も、同じように特色のある、人間臭い面を持ち合わせていたことが分かる。もともと下宿から発展してホテルになった経緯もあるのだろうか、賑やかなホテルだったのだろう。2016/08/13
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