感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
285
宇能鴻一郎ほど人生の岐路を、常に思いがけない方向に進んでいった作家も珍しい。東大の国文科を卒業した後、大学院の博士後期課程を満期退学(普通はこの後は研究者になる)。そして、27歳で芥川賞作家に。その後さらなる変身を遂げ、超売れっ子の官能小説家に。晩年は金沢八景に600坪の豪邸を構えるに至った。さて「鯨神」だが、技巧的な完成度は極めて高い。それだけに明治期平戸の捕鯨の集落という仮構は、稠密過ぎて拡がりを持てないという欠点を抱え込まざるを得ない。鯨との闘いだけに終始しなかったことは、作品に厚みをもたらした。2015/12/15
遥かなる想い
195
第46回(1961年)芥川賞。 明治の平戸における強大な鯨と、シャキと 呼ばれる若者の戦いの物語である。 古きテーマのためなのだろうか.. 全編に流れる 野生的なエネルギーが懐かしく、 紀州男、エイ、トヨの誰もが 持つ潔い心根が 気持ち良い、物語だった。2017/08/03
kaizen@名古屋de朝活読書会
100
芥川賞】明治初頭、肥前平戸島和田浦。網舟と勢子舟。代々命をかけて鯨を取る。こういった鯨との壮絶な戦いの中で、鯨をすべて余すこと亡く利用してきた日本の文化の大切さを知る。鯨油を取るために他は捨ててきた人達と同じ目線で鯨について議論をしたくないと思った。2014/10/30
ハチアカデミー
21
A 身内を全て殺され復讐を誓う主人公シャキ、村のならず者で金のために捕鯨をする紀州男、その二人を取り巻く女達と、圧倒的存在感の「鯨神」の神話。戦いの果てに、シャキは鯨と同化する。「おれが鯨神だ。鯨神が俺だ」。この一文(とラストの一文)に向かって力強く進む物語に引き込まれる。絵巻から始まる導入部も良し。構成力も凄い。表題作同様鯨を描いた「地獄銛」、村の閉塞感と抗えぬ性を描く「西洋祈りの女」(タイトルも良い)、そして中上健次ばりの暴力性を持つ「光りの飢え」の収録作四編、その全てが傑作。いやはや、天才である。2012/07/12
たまきら
16
備忘録。2022/11/10