感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フリウリ
6
冒頭からの「今年の春」(昭和9年)、「今年の初夏」(昭和18年)、「今年の秋」(昭和34年)は、それぞれ父、母、弟の死が間近となり、瀬戸内の故郷に帰るお話です。淡々とした文章ですが、長く文章を書いてきたからこそ、このテーマが生きてくるわけで、素晴らしいと思いました。最後の「文学生活の六十年」(昭和37年)は談話の文字起こしのようですが、正宗白鳥の人となりがよく出ているように思われます。72024/03/29
m_bat_h
5
文章の美しさが絶賛されているポストを見てどうしても読みたくなり中古で入手(通える図書館にはなかった)。迫る肉親の死を淡々と書き綴る文章を読むうちに母が亡くなった。2024/12/16
champclair´69
2
#読了 白鳥の最晩年に弟の死に際して書かれた作品で、小説というより随筆である。自らも人生の終末が近いからなのか、死に行く肉親を特に悲しむ風でもなく、淡々と心に浮かんでくる思いや葬式までの出来事を綴っている。弟を見舞うことはしているものの、釣りに行ったり京阪地方で遊んで帰ったりしており、帰宅後弟の死の知らせを毎日心待ちにしていた、という表現すらある。 そのような超然とした態度でありつつ、自分の死に様や魂の行き場所は何処なのか、といった不安を白鳥はやはり持っていたのではないだろうか。2022/11/28