中公文庫
富士

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  • サイズ 文庫判/ページ数 638p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784122000216
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C1193

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

メタボン

34
☆☆☆☆★ とてつもない大作だった。正気と狂気が渾然一体となり、饒舌に語られる手記、文章の力がすごい。ストーリー自体は、精神病院をめぐって、次々に登場人物が変死する支離滅裂と言ってもいい内容であるが、その混沌とした世界観がかえって人間の存在の意味を根源から問うている。突き抜けている小説。2015/08/25

かわうそ

31
戦時下の精神病院という特殊な状況においては正常と異常の境界は曖昧になり患者だけではなく医者や看護師、患者の家族といった関係者全員が正常から狂気に至るグラデーションをゆるやかに行き来する。というお話としては少々論理的すぎるような気もするけど非常に面白く読みました。2015/02/14

sabosashi

14
何十年ものあいだ、読んでみたいと憧れてきた作品。  戦時の精神病院が舞台で、人物も正常と狂気とに二分されるのでなくて、曖昧さをふくんでいる。  ところが精神医学の見方からすると、かなり的外れなところがあるとかいう話。  ただでさえ、精神医学には主観的なところがあるだけではなく、その発展が著しい。  あるいは、仮説に花が咲いているというところか。  話は、いわゆる人間存在の深奥にまで至っている。  つまるところ、キリスト者でないものが、神について真摯に黙考するというところか。 2019/02/21

かふ

14
戦時中の富士の麓の精神病院での人間模様。世の中が不自由の時代に自由過ぎる精神病者--魅力あるキャラクター(個性)たち。語り手が精神科の実習生が試練に出会う。まだ精神が固まっていないのに、そこでいろんな精神病者と出会い事件が起きるから、そこで試される実習生。スラップスティックな小説。その序章とエピローグにあたる「神の餌」と「神の指」は神と人間と動物を巡る哲学的エッセイの名文だ。2015/07/21

tei

9
凄いものを読んでしまった。戦時下という「異常」な時期・社会にあって、「正常」とはどういうことなのか。そもそも、正常異常の境はどこにあるのか。その判断を下すべきは誰なのか。誰がおかしくて、誰が普通なのか。何もかも混沌として判別の付かなくなる終盤の盛り上がりは異様という他ないが、そこから終章へのトーンダウンが、また凄い。この本の中では、医者より患者の方が生気があるようだ。思い返すと、鮮明に記憶に残っているのは、彼らの方なのだ。一条の存在だけが、語り手を救い得た可能性だったのではないだろうか……。2016/04/10

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