出版社内容情報
私たちは「われ知らずにしてしまった」などということがある。種々の症例や夢を取り上げながら、この不思議な心の深層を解明する。
内容説明
私たちは何かの行為をしたあとで「われ知らずにしてしまった」ということがある。無意識の世界とは何なのか。ユング派の心理療法家として知られる著者は、種々の症例や夢の具体例を取り上げながらこの不思議な心の深層を解明する。また、無意識のなかで、男性・女性によって異性像がどうイメージされ、生活行動にどう現れるのか、心のエネルギーの退行がマザー・コンプレックスに根ざす例なども含めて鋭くメスを入れる。
目次
1 無意識へのアプローチ(無意識のはたらき;コンプレックス;心の構造)
2 イメージの世界(イメージとシンボル;心的エネルギー;夢)
3 無意識の深層(グレートマザー;元型;影)
4 無意識界の異性像(ペルソナと心;アニマ;アニムス;男性と女性)
5 自己実現の過程(自我と自己;自己のシンボル;マンダラ;個性化の過程)
著者等紹介
河合隼雄[カワイハヤオ]
1928年、兵庫県に生まれる。1952年、京都大学理学部卒、1965年、ユング研究所よりユング派精神分析家の資格を取得。京都大学教育学部教授。国際日本文化研究センター所長、文化庁長官を歴任。専攻、臨床心理学。2007年7月、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
207
心的エネルギーと退行、イメージとシンボル、夢、そして個人を超えた普遍的無意識へと話題は進む。ユングは人類共通のイメージを作るものとして元型という概念を唱えた。これは人格の発展を促しもするが、暴走させ破滅に導くこともある。ユングはその捉え難さを「結晶の軸構造(結晶ができあがるまで存在しないもの)」に喩え、《先験的に与えられた表象可能性》といっている。本書ではアニマ・アニムスや影など、元型とのつきあい方が大変参考になった。例えば影は自分の認めたくない心的要素だが、これを引き戻すことによって人は成長できるのだ。2024/03/02
アオイトリ
23
いい大人になって、あらためてファンタジー小説に夢中になっています。なんだか懐かしい。河合隼雄先生が説明される深層心理の世界を再読。世代も文化も超えて、誰もが共有している深い記憶?元型と言われる老賢者、始源児、トリックスター、グレートマザーなど、物語で活躍するイメージたちに納得。愛する子どもを飲み込んでしまうほどの、母性の恐ろしさも再認識しました。我が身に置き換えると、卒親して働く中高年女性のアニムスの恐ろしさも…笑。簡単じゃないけど、何事もバランス、陰陽を統合できた時、穏やかな人格で生きていけるのかなと。2023/09/08
ばんだねいっぺい
22
「貧困と地域」を買ったつもりが、この本だった。敬愛する河合先生の本で、しかも未読だったので、勝手に読めということと解釈。自分のなかに押し込めていることと向き合うことをおろそかにしてはいけないなと改めて思いを新たにした。いくつか夢も、記録したい。フィレモンって、そうだったのか。2017/07/22
そんれい
18
1977年初版、2017年改版。無意識の世界に興味をもちこの本を読み進めたが、「なるほど」と思わせることばかり。「自我」の中心に自覚できない「自己」があり、半覚醒時の夢にその兆候が現れるというのは面白い。今の時代のユングの評価はどうなっているのかな。2020/12/20
シルク
13
無意識ちゅーもんの研究史を辿ってきて、手にした本。主にユングの視点からの把握を述べているこの本は、わたくしにとっては心地良い小休止という感じの1冊だった。河合先生の文章は不思議だ。端正と言ったら良いのか。。。何を語る時も、リズムが抑制されてて、きっちりと一定に保たれているというのか。かといって無味乾燥、堅苦しいという訳では決して無くてな。うん、岩窟に住む老賢者が語るのを聞く感じがする。今ふと思いついたのだけど、物語の中に、河合先生とイメージが重なる人がいたわ。エンデ『モモ』の、時を司るマイスター・ホラだ。2022/08/20