出版社内容情報
古代ローマの哲人エピクテトスは奴隷出身でストア派に学ぶ。自由身分となると子弟に神の意義を説く。人生の深淵を知る者の説得力。
内容説明
古代ローマの哲人エピクテトスはストア派に学び、ストイックな思索に耽るが、その核には神の存在があった。人生の深淵と神の関係。
目次
第1巻(摂理について;私たちの権内にあるものと私たちの権内にないものとについて ほか)
第2巻(大胆は慎重に矛盾しないということ;平静について ほか)
第3巻(おしゃれについて;雑集 ほか)
第4巻(社交について;なにとなにとを交換すべきか ほか)
著者等紹介
エピクテトス[エピクテトス]
55?~135?。小アジアのフリュギア地方、ヒエラポリス生まれ。母は奴隷、父は不明。売られてローマに出る。皇帝ネロの臣エバプロディトスに仕え、後ルフスにストア派哲学を学ぶ。さらに学派は異なるがソクラテス、ディオゲネスより受けた影響も大きかった。ギリシアに移住し学校を創建して子弟を教えることで半生を過ごした。著作は残さなかったが、弟子アリアノスが師の『語録』『要録』をまとめた
鹿野治助[カノジスケ]
1901(明治34)年山形市生まれ。山形高等学校を経て京都帝国大学文学部哲学科卒業。西田幾多郎門下。京都工藝繊維大学教授、大阪医科大学教授を歴任。ドイツ語、哲学専攻。1991(平成3)年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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テツ
19
ストア派の賢人エピクテトス。世界を内側と外側に分けて区別すること。内側である自らの感情や意志を大切に考えて生きていくべきであり、外側である存在(大雑把に分類するのなら自分自身以外の全て)のことなど気にするなという考えは今この時代にこそ必要な気がするな。大多数の人間は自分以外のことに縛られ支配され不幸になっている。自分がコントロールすべきもの、コントロールすることが許されているものは自分自身だけであるということについて考えてみることは、そうした現代人的な自縄自縛から抜け出すための力になるのかもしれない。2020/06/04
吟遊
13
岩波絶版のようなので、中公クラシックスに入ってほんとうによかった。やっぱりストイックです。。2018/11/30
ともブン
12
奴隷の出自で古代ギリシャ神を信仰した後期ストア派のエピクテトス。運命論者で、神の書いたシナリオに役者である自分たちは懸命に演じねばならないと語っており、ここらへんがキリスト教の教義と一致して、現代に至るまで広く読まれているのだなぁと感じた。のちにニーチェに大きく影響を与えた『宇宙の周期的回帰』という概念も、「なんぴとも他人の意志の主人ではない。意思にのみ善悪がある」「人間は心像を理性的に使用する可死的動物だ」という言葉も心に残った。翻訳のせいか頑固な語り口だったので読む人を選ぶかも。2022/05/20
あっくん
6
奴隷の身から哲学者となったエピクテトスの言葉は、超俗的だが、真理を突いている。 彼の主張はシンプル。自分のコントロール外のことは気にせず、コントロール内に全力を尽くすこと。 「他人も自分をも非難しないのが、教養がある者がすべきことだ」 「病気は肉体の妨げではあるが、意志の妨げではない」2022/03/21
古川
3
ストア派は世界を内的なもの(感情、理性、意志)と外的なもの(社会・国・気候その他すべて)に分類し、自分が自由にできるのは内的なものだけなので幸福も不幸もすべて自分の意志次第でありひたすら自己を鍛錬せよと説く。いつ死んでもおかしくない理不尽な生を送らざるを得なかった古代人にとっては福音だったかもしれない。現代にこれをそのまま適用するとブラック企業や国の怠慢を擁護するだけに終わりそうだが、天災などの本当に自分ではどうしようもない問題に苦しんでいるひとには有用だし、そこは実用主義的に考えるべきだろう。2018/03/19