内容説明
篤農家にして求道者、そして何より再建のプロ、農政家かく語りき。
著者等紹介
二宮尊徳[ニノミヤソントク]
1787~1856。江戸後期の農政家。名は金次郎。相模国栢山村(現、小田原市)の農家に生まれた。家の没落に遭うが、20歳で一家を再興する。小田原藩家老・服部家の家政再建を任され、それを契機に藩主大久保忠真に見出され、分家宇津家の下野国桜町領の再建を成功させた。小田原藩領の農村救済に「報徳仕法」を実施し、実践的合理主義と精神主義を折衷する篤農哲学を披露し、老中水野忠邦に幕府役人に取り立てられると「日光領仕法雛形」を作成した
児玉幸多[コダマコウタ]
1909年生まれ。東京帝国大学国史学科卒。学習院大学教授、学長を経て同大名誉教授。日本近世史、農村史、近世交通史専攻。2007年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ehirano1
82
現代をより良く生きるヒントがけっこう詰まっていると感じました。特に、二宮翁の教え諭す態度というか能力には深く感銘を受け、「人道と天道」「積小為大」「分度」「推譲」がその根源であり、そのためには自身の肉体や精神のバランスを整えておかないといけないと思いました。2023/12/30
KAZOO
73
二宮尊徳という人物は、最近はあまり見かけなくなった薪を背負って本を読んでいるイメージが強いのですが、本当の人物像はこの本を読むとよくわかります。農村をよくしようとした篤農家です。実際は偉丈夫で頑健な体を持って実践かであったということです。この本の中にはそのようなことが書かれており現代の経営などにも通じるものがあります。2015/06/29
にいたけ
37
読書会課題本。二宮尊徳の言葉をあえてわかりやすく夜話の形で後世に残した。学ぶことも自然を観る洞察力もこの時代の誰よりも優れていたと思われる尊徳は役人からも農民からも理解を得られなかった。それでも結果を残した尊徳の偉大さを理解した上で読んで欲しい。昨今の結果をすぐに求める若者には特に💦バックグラウンド知らないと言葉が上滑りして説教のようになってしまう。私も子供の頃は二宮尊徳像を「ガリ勉な奴」と思っていた。知らないとは本当に恐ろしく今となっては恥ずかしい。今では歩きスマホダメみたいな例で使われるとか🥲 2025/01/13
ロビン
14
江戸時代の農政家二宮尊徳の言葉を弟子が聞き書きしたもの。農民の子が読書すること自体が珍事になる時代に、働きながら『大学』『論語』などの本を読み、自分の得た経験、また自然を観察・洞察して得た智慧を活かして「報徳仕法」という、借金まみれの家政や荒廃した農村を救う復興ノウハウを作りあげ、実践し、成果を出してゆく。「人道と天道」「積小為大」「分度(ぶんど)」と「推譲(すいじょう)」等の考えを軸にして<経済と道徳>を両立させた尊徳は、『論語と算盤』の渋沢栄一の先鞭をつけていたのである。折に触れ読み返したい名著だ。2023/04/20
壱萬参仟縁
13
「人道は譲りにあり」(pp.4-5)。余裕があるのなら、他人に譲り、将来に譲るというのが人道である。これは、現世代が次世代に譲るものがあるのなら、積極的にケチケチせずに譲っていく精神を指すと思う。「富国の大本」でも、多く稼いで少なく使うことを大道としているので、貯蓄を奨めている(p.15)。貧富の論でも、将来のことを考える者は富み、目先のことだけを考える者は貧する(p.48)。貨財は節約、努力するところに集まるものだ(p.114)。以上のように、将来の使用のために譲ることは極めて大切。原発は譲れない。2012/06/12