内容説明
自由主義の護持者が英国民に捧げた第二の『君主論』の意味。
目次
内閣
君主
貴族院
衆議院
内閣の更迭
いわゆる「牽制と均衡」
議院内閣制の必要条件、ならびにそのイギリス的特殊形態
憲政の歴史とその成果〔結び〕
著者等紹介
バジョット[バジョット][Bagehot,Walter]
1826~77。イギリスの銀行家、政治評論家。銀行家の一人息子として生まれる。ロンドン大学卒業後渡仏し、ルイ・ナポレオンのクーデタに遭遇。この事件について書簡形式の評論を発表し、ナポレオンを擁護する保守的な内容で、反ナポレオンの風潮が強かったイギリス世論に一石を投じた。帰国後、評論活動を展開し、この頃『エコノミスト』創設者で自由党の幹部議員だったウィルソンを知りその長女と結婚、同誌の経営・編集を引き継ぐ。『イギリス憲政論』の成功で政治評論家の名声を得て、四度下院議員選挙に立候補するも失敗した
小松春雄[コマツハルオ]
1913(大正2)年生まれ。中央大学名誉教授。1988年逝去。イギリス政治学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
傘緑
34
政治学の古典。議会主権の英国における立憲君主制、議院内閣制を擁護の保守の教科書。「君主制は強固な統治形態…最大の理由は、これがわかりやすいということにある」本職が経済屋さんだけあって、かなり率直かつラディカル。「民衆政治の原則は、最高権力、すなわち政策決定権が国民の手中にある…選出された国民、すなわち選良をいうのである」「議院内閣制の生命は、討論にある」「自由政治というものは、国民が自由意思によって選択した政府に服する政治」「民主主義は、恐ろしい破滅を味わわないかぎり…みずからが劣っていることを信じない」2016/12/20
筑紫の國造
11
英国保守主義にとって重要な一冊。政治評論家のバジョットは、英国流の立憲君主制を擁護し、大統領よりも優れているとしている。「君主の神聖性の保持」などについては現在の日本でも参考になる部分が少なくない。ただ、この本はバジョットの時代のイギリス政治について具体的な人名や出来事を上げて論じてあり、この時代の知識がないと理解しづらい部分もある。文章そのものは簡潔でわかりやすい。2023/07/21
日の光と暁の藍
6
「議会の党派心や利己主義については、議会と無関係で、議会に超越している権威によって阻止するのが、最上の策である」(P284)。バジョットはこの例に、公平無私であらゆる欲求から独立しているとしてイギリス植民地総督を挙げている。では現代において議会に超越した権威は存在するのか。尊敬の念という言葉にバジョットは度々言及する。富や地位を持った人物に対し、それだけで人々は尊敬を抱くかというと否である。現代日本において、尊敬され称賛される存在や行動とは一体どのようなものなのだろうか。それは存在するのだろうか。2020/12/31
ア
2
1867年に刊行された、政治学の古典。立憲君主制、議院内閣制、二院制、不文憲法をとるイギリス憲政について論じる。当時の政治情勢やイギリス政治史に即して論じているので、ピンとこない話が多く、苦労した。イギリスの憲法や政治制度や構成員の「威厳・感情の部分」と「機能・理性の部分」という対比が興味深い。2019/03/18
ろーじゃ
2
自由主義・保守主義の立場から、立憲君主制と議員内閣制の優位と擁護を主張したウォルター・バジョットの名著です。 力量優れた君主が現れる事が稀である事を指摘しつつも、結果として君主制を擁護している点が特徴的で、シニカルな論調が多かったです。2012/10/13