出版社内容情報
戦後日本を背負った吉田茂とは何者か? 危機の時代に、日本を領導した政党政治史上最大の政治家を再評価した画期的論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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20
今まで読んできた本は吉田に対して批判的なものが多かったため、どうにも最初の方はしっくりこなかったのですが、段々と高坂さんの視点で語られる吉田論が興味深く思えてきました。吉田茂自身に興味があったため、「吉田茂以降」からはかなり飛ばし飛ばしで読んでしまいましたが、一章に関しては本当に、わかりやすく良かったです。ともあれ、やはり私自身まだ吉田の行った日米交渉に関しては批判的なのですが、他の視点から考えるのも大事ですね。もう少し読み込まなければ。2014/06/05
zoe
18
2006年。吉田茂の政治とそれ以降を比較した本。戦後の混乱期に吉田茂は首相となり、日本をまとめ上げた。外交に実務家であったことが大きい。混乱期に、日本の状況を冷静に見極め、混乱を切り抜けた。ある程度、混乱のトンネルを抜けると、意見を交換し、議論を深めて、方向性を決めていく政治が求められ、吉田茂は退場していく。2024/08/09
masabi
18
【概要】吉田茂の評価、戦後日本の政治状況、世論の関係性を論じる。【感想】礼讚するでなくすべてを否定するでもないバランスの取れた筆致が心地好い。国会に登る顔触れは変わっても依然として筆者の指摘は有効だと感じ、同じ構造が長らく続いているのだろう。吉田茂論を通じてチャーチルを連想した。時代の要請に応えて国の基礎を作り上げたが、特定の時期を過ぎるともはや時代遅れと見なされた点などが関係しているのだろうか。 2019/04/17
ゲオルギオ・ハーン
16
吉田茂評がメインだが、岸信介、池田勇人についても吉田茂との比較をしながらまとめている、またメディア論やリーダー論について書いたものもある。著者のすごいところは真偽不明のマイナーな逸話は取り上げないこと。記録に残っているものだけを評価材料としていること。著者の感想は徹底的に排して客観的な評価をすることに徹していること。以上から論理的な人物評になっていて読んでいてとても面白く、歴史上の偉人や企業の経営者や幹部のことを考える時にこうした考え方ができるようになりたいと思いました。2020/10/16
かんがく
10
書かれたのは60年代。吉田に対して批判的な言説が多い時代に、吉田を客観的に評価して、現在の吉田像を確立した名著。吉田や岸は極めて優秀な官僚であり、政治家としての腕も確かだが、世論への迎合が出来ないタイプであることから嫌われてしまった。池田は2人の路線をうまく修正して引き継ぐことが出来た。現代ではこういう政治家はワイドショーにたたかれて一瞬で終わるのかなとも思う。2019/12/02