内容説明
古代ギリシア・ローマの素養を駆使した諷刺と警句の戯文。
目次
ロッテルダムのエラスムスよりその親しき友トマス・モアに捧ぐ
痴愚神は語る
著者等紹介
エラスムス[エラスムス][Erasmus,Desiderius]
1469~1536。人文主義者、神学者、司祭。ロッテルダム近郊のハウダに生まれ、修道会に入って古典を学び、司教秘書を経てパリ大学で神学を修める。後にイングランドに赴き終生の友人トマス・モア、師ジョン・コレット、ヘンリー王子(後のヘンリー8世)らと知り合う。『格言集』『校訂 新約聖書』『ヒエロニムス全集』で人文主義者として名声を得た。後年教会の分裂をも厭わないマルティン・ルターと論争した
渡辺一夫[ワタナベカズオ]
1901年東京生まれ。フランス文学専攻。東京大学名誉教授。1975年逝去
二宮敬[ニノミヤタカシ]
1928年東京生まれ。フランス文学専攻。東京大学名誉教授。2002年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
114
岩波文庫や人類の知的遺産でも読んでいるのですが、この訳が一番読みやすさがあるという気がしました。世の中を皮肉的に見て痴愚神の言葉を借りて批評しているのでしょう。挿絵版画がまた結構面白く描かれています。トマス・モアに宛ててて書かれたようですが。2015/11/21
藤月はな(灯れ松明の火)
15
当時は最も清貧であると考えられた修道士や相対する貞節さと行いを嘲り、皮肉り、愚かな領主による活躍の場の広がりを喜び、人間の建前によってますます、己は栄えるであろうと宣う痴愚女神。アンブーリンと結婚したかったために正国教会を作ったヘンリ8世を非難した為に処刑されたトマス・モアと皮肉のユーモアを交えることで人々を非難したエラスムス。長生きしやすいのは己の生き方を頑なに貫くよりも人生を捉えながらも戯れる方であることは今も変わらない一抹の諦観があるばかりだ。2012/10/18
tieckP(ティークP)
6
仏語からの重訳なのですが、渡辺一夫の文体に触れられるならそれも良いだろうと選択。読みやすかった。この本の楽しみ方は二つあって、一つは盛んになされる引用を逐一追ってその間テクスト性を楽しむやり方。ユマニスト最高と謳われたその学識にうならされると思う。一方で、エラスムスが手すさびとしてこれを書いたことを思えば、全体の一貫性など考えずに読むのもいい。場当たり的に茶化し続ける知性として、止まらない機知の奔流として楽しみたい。おそらく、賢くあれ、しかし生真面目になることなく戯れよ、これがこの本の教訓だろうから。2012/09/18
アルゴス
4
トマス・モアの親友だったエラスムスが、モアの名前にこじつけて思い立った痴愚モリアの女神の語る世間の風刺。一番大切なのは愚かであることであると語る言葉は生き生きとしていて、エラスムスの心の高揚を感じさせる。コミュニティ「古典を読もう」のかかわりで読んだ一冊。2018/01/29
とんこつ
4
平和と寛容を説いたエラスムスというイメージがあったので、すごく堅苦しい本なのかなと思ったが、良い意味で拍子抜け。終始おどけたような口調でした。しかし彼の寛容な精神はこの痴愚神礼賛のように、怒りをユーモアに昇華させることで維持されてたのではないかと強く感じた。内容は、形式化し腐敗した神学者や司祭への批判など。また徹底した反戦思想にも感銘を受けた。思想が近いとされていたルターに同調しなかったのも、なるほどよく頷ける。2011/04/08