出版社内容情報
青い空、海、ゴーヤに三線。沖縄といえば南の楽園。しかし戦争と基地の島でもある。日本人の「沖縄へのまさざし」をたどる旅へ。
内容説明
青い海、白い砂浜、穏やかな三線の音。「基地の現実」を一手に引き受けてきた島で、こうした南の楽園像は誰によって、いかにしてつくられたのか。数々の風景を通じて、沖縄のいまを探る。
目次
序章 方法としてのツーリスト
第1章 戦前の沖縄観光―1879‐1940
第2章 大正・昭和初期の南島ブーム
第3章 戦跡観光と沖縄病―1954‐1971
第4章 万博がつくった沖縄イメージ―沖縄海洋博1975
第5章 キャンペーン的リアリティの浸透―1972‐1979
第6章 ツーリストの目線の逆用―1980‐2000
第7章 基地とリゾート、二重の現実―1995‐2000
第8章 大田昌秀の「沖縄の心」からモンパチの「琉球の心」へ―2000‐現在
第9章 八重山の現在―移住ブームとミニバブルのなかで
終章 沖縄と日本
著者等紹介
多田治[タダオサム]
1970年、大阪府生まれ。社会学者。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。琉球大学法文学部助教授を経て、一橋大学大学院社会学研究科准教授。家族の住む沖縄と東京の職場を行き来する二重生活をしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
二人娘の父
7
「沖縄イメージの誕生」と比べて、歴史的な遡りもあり、課題を包括的に理解できる構成になっていると思う。2008年出版の著作だが、提示されている問題はほぼ解決しておらず、むしろ深化・悪化している側面も。特に2010年代以降の日本政府の強権的な姿勢は、観光立県・沖縄とは本質的に相いれない。特に宮古や八重山諸島の基地機能強化は目を覆うばかりだ。しかしまさに「ちゅらさん」再放送の始まったこの時期に読んだのは、偶然ではあるが不思議だ。内地からの沖縄の「まなざし」(この表現好きではないが…)が問われる状況に変化はない。2024/04/15
苦虫
6
エッセイとしても(というよりもはや雄大な人生録のような…笑)、学術的なものとしても楽しめる。何より書き手の沖縄愛(そしてそこから生まれるアンビバレントな感情)が感じられる。沖縄が消費される過程、沖縄の歴史的(そして恣意的に作られた)多重性を、身近なドラマや雑誌という素材を用いながら分析している。「沖縄通い婚」やツーリズムの「まだ見つからない何かを求める」嗜好が面白かった。BEGINやモンパチ?が語る沖縄と、安室ちゃんが語る沖縄は違うらしい。とても面白い一冊。2015/08/22
かみーゆ
4
なるほどねー、58号がやたら南国っぽいのは海洋博の時のイメージ戦略の一環だったのね。観光する側とされる側の視点か。何となくはわかってたつもりでしたけど。難しい問題ですね。どうしたって沖縄行くなら南国リゾート感味わいたいもんなあ。しかし90年代以降の沖縄のイメージを考えると、ちゅらさんってやっぱりスゴかったんだなあと思います。それに比べてちむどんどん。。2023/02/09
Hiroki Nishizumi
2
外地と内地の狭間で揺れ動く沖縄の歴史が概観されている。ツーリスト目線、自身の体験による移住者目線、さらに研究者目線で書かれており大変参考になった。 琉球と沖縄の使い分けとナイチャー・ウチナンチューのすれ違い。高度経済成長期に成功したオリンピック・万博などイベントを起爆剤とした交通インフラを整えていくテイクオフ的20世紀手法への批判。さらに戦前の沖縄旅行記・観光案内書を始めとする引用を学者らしく丁寧にまとめている。 また文中 p.176食文化にこそ差別は生じる、との指摘には頓悟した。2012/03/17
yarake isuke
2
沖縄がどのような視点で見られてきたのか、見られているのか。愛情をもってまとめられています。2008/12/09