出版社内容情報
蒙古が襲来するなど、激動した鎌倉時代を生きた日蓮。自筆の書簡、数多い著作ほか関係史料を博捜し、その思想と人物像に迫る。
内容説明
地震や疫病、蒙古襲来など、激動の鎌倉時代を生きた日蓮。天台宗ほか諸宗を学び、三二歳で日蓮宗を開いて法華経の信仰を説いた。鎌倉を本拠に辻説法で他宗を攻撃して圧迫を受け、建白書『立正安国論』の筆禍で伊豆に、のちには佐渡に配流された。死をも恐れぬ「闘う仏教者」のイメージがある一方、民衆の苦しみに寄り添う姿も垣間見られる日蓮。自筆の書簡、数多くの著作をはじめ、史料を博捜して、その思想と人物像に迫る。
目次
第1章 立教開宗へ(安房に生まれる;貫名氏の出身 ほか)
第2章 立正安国への思いと挫折(鎌倉での日蓮;『守護国家論』 ほか)
第3章 蒙古襲来と他宗批判(念仏系寺院の展開と法難;伊豆配流 ほか)
第4章 佐渡への配流(文永八年の法難;教団の離散と改宗者の出現 ほか)
第5章 身延山の暮らし(日蓮赦免;身延入山 ほか)
著者等紹介
松尾剛次[マツオケンジ]
1954年(昭和29年)、長崎県に生まれる。東京大学文学部卒業後、同大学大学院に進む。東京大学文学博士。山形大学教授、東京大学特任教授、日本仏教綜合研究学会会長などを歴任。山形大学名誉教授。専門分野は日本中世史、宗教社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まちゃ
47
身延山久遠寺を訪れたことがある、というご縁で手に取った一冊。日蓮上人の生涯については、ある程度知ることができましたが、その思想や日蓮宗(法華宗)については、あまり理解できませんでした。思想の背景である「法華経が最勝の経典。それを否認する他宗は謗法(正法誹謗)を犯している」を理解するには、鎌倉新仏教について知る必要がありそうです。2024/03/02
マカロニ マカロン
17
個人の感想です:B。今月末(2024/3)の鎌倉聖地巡礼の参考本として読んだが、日蓮に敵対していたはずの極楽寺の開祖忍性(にんしょう)のことを随分持ち上げている本だった。今回は極楽寺周辺を重点的に歩くのでちょうど良いとは思った。忍性は日蓮と祈雨の祈禱を競い、負けたため讒言し日蓮は竜の口の法難にあったと聞いたことがあるが、佐渡から帰還できたのは忍性の働きかけがあったためと本書に書かれていて興味深い。娑婆世界ではなく(あの世での)極楽浄土に救いを求めた浄土宗よりこの世での救済を主張した日蓮の方がわかりやすい2024/03/15
nishiyan
15
思想史的研究の成果を援用しつつ、歴史学的な方法論を駆使して描き出した日蓮の評伝。数々の自筆書簡や著作を紹介しながら日蓮の人物像と思想をコンパクトに紹介している点で本書は入門書として適しているといえるだろう。興味深いのは日蓮と対立した真言律宗の忍性の研究成果も開陳されているところ。日蓮視点では悪役として描かれていた忍性の活躍が描かれたことで、本書は日蓮の入門書でありながら鎌倉仏教諸派への誘いへとなっているのだから面白い。次は忍性の評伝が読んでみたくなった。2024/01/04
qwer0987
13
日蓮の生涯をざっくり知る分にはちょうどいい分量だった。日蓮と言えば、鎌倉仏教全方位に喧嘩を売ったという認識があったけど、少なくとも罪状は悪口で(当時では島流レベル)、身内には優しかったようだ。法華経の正しさを確信した日蓮は念仏宗や、鎌倉で支持を得始めた忍性たちや禅も非難する。どちらかと言えば目の前の流行仏教を批判している感じだ。そして他宗からの反撃も自身の正しさを確信する材料とするあたりすごい。そして元寇によりさらに自分の正しさを確信するのだが、元軍が撃退されたことで理論に綻びが出る点皮肉であった。2024/06/25
アメヲトコ
10
2023年11月刊。天台宗の官僧の地位を捨てて遁世し、次第に戦闘的立場を強めていく日蓮の一生が描かれます。初期は真言宗も認める立場だったのね。蒙古襲来の予言的中によって名を挙げながらも、日本側勝利が想定外であったがゆえに逆にその勝利に落胆するさまが人間らしい。著者は忍性についての著作があるため、日蓮との関係でかなり忍性に肩入れした解釈を披露していますが、このあたりの論証は著者の希望的推測という印象。2024/05/07