出版社内容情報
蘇我氏が武力で排除された乙巳の変。その真の目的は何だったのか。政変にひそむ謎を検証した旧版『大化改新』の全面改訂版。
内容説明
皇極四年(六四五)、中大兄皇子と中臣鎌足は蘇我蝦夷・入鹿父子を武力で排除した。この乙巳の変が国政改革「大化改新」の序幕だったという筋書きはあまりにも有名である。だが、これに関して残された史料は中大兄・鎌足中心に事件を描く極めて偏ったものだった。クーデターの真の目的は何か。その首謀者は誰だったのか。本書は、王位継承をめぐる路線対立に着目して旧版を大幅改稿し、熾烈な権力闘争の内実に迫るものである。
目次
序章 皇極四年六月十二日
第1章 王位継承の諸段階
第2章 王権と藤原氏の歴史
第3章 検証「乙巳の変」の人間関係
第4章 検証「乙巳の変」の展開過程
終章 「乙巳の変」の後にくるもの
著者等紹介
遠山美都男[トオヤマミツオ]
1957年(昭和32年)、東京都に生まれる。学習院大学文学部史学科卒業。同大学大学院に進み、博士号(史学)を取得。専攻、日本古代史。学習院大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Koichiro Minematsu
54
乙巳の変が皇極天皇によるクーデターとは。それによって孝徳天皇へ、日本で初めての生前攘夷が画策され、王権の集中によって結果的に大化の改新と言われる改新が進むことになったと。至極理解できる研究本と思う。2023/08/08
Shoji
32
大化の改新の意義である「豪族による支配が終わり、律令国家としての歩みが始まった」について、深く解説された本かなと思っていました。少々違っていました。なかなか斬新な切り口です。蘇我氏の横暴を廃するために「中大兄皇子と中臣鎌足は談合した」と思っていましたが、この本では、中大兄と鎌足は乙巳の変の当日まで知らぬ同士だったとか。あと、気になったのは「史実に基づいて」を多用しながら「思われる」も多用していました。それでも、まあ最後まで読ませる筆力はさすがです。小説ではありませんが面白かったですよ。2022/06/05
Tomoichi
28
今更「大化改新」って、と期待せずに読み始めるが、これがミステリーを読むような面白さ。他の研究者の文章と比較するとまだ定説にはなっていないようだが、「古事記」や「日本書紀」などの記述をそのまま史実とする意見もどうかなと思うので、その記紀の裏に隠された史実にこれからも研究者のみなさん、迫ってください!2024/01/28
みこ
28
蘇我入鹿暗殺事件の真相に一石を投じる。如何せん資料の乏しい時代でその資料も当事者の一人である中臣鎌足と中大兄皇子を祖に持つ後の権力者によって書かれたものだから推測に推測を重ねたものになるのは致し方ないか。それでも主犯と思われ人物がそれほど重要な立場でなく、お飾りと思われた地味な印象の意外な人物が黒幕だった可能性を示唆するなどある種のミステリーとしては十分堪能できる。2022/07/01
Francis
16
教科書に掲載され、そして1990年代の政治改革期に一時的に存在した会派「改新」の由来にもなった(らしい)645年の「大化の改新」の真相を大胆に書く。大化の改新のきっかけとなった蘇我入鹿殺害そして蘇我本家の滅亡を招いた「乙巳の変」の真の黒幕、乙巳の変の真の目的などを当時大和朝廷を支えていた豪族たちの立地などを元に読み解いていく。あまりにも大胆なので「本当かなあ?」と言う気持ちもあるが、この時期、天皇家が敏達系と用明系に別れ、最終的に乙巳の変により敏達系に統一されたのは間違いなさそうである。2025/03/01