中公新書<br> 宗教と過激思想―現代の信仰と社会に何が起きているか

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中公新書
宗教と過激思想―現代の信仰と社会に何が起きているか

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  • サイズ 新書判/ページ数 242p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121026422
  • NDC分類 161
  • Cコード C1214

出版社内容情報

21世紀に入ってから、「安全な宗教」と「危険な宗教」を区別するのに「過激」という言葉がよく使われるようになった。「イスラム過激派」のように。しかしその「過激」さのもとはいったい何なのか。本書は、イスラム、キリスト教、仏教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、神道から、過激とされた宗教思想をとりあげ、わかりやすく解説する。クトゥブ、マルコムX、ジョン・ブラウン、井上日召などの「宗教的過激思想」は、近代以前の異端とは異なる、新たな共通する特徴を帯びていることを浮かび上がらせる。

内容説明

近年、危険とみなされる宗教に対して、「異端」にかわり、「過激」という表現がよく使われる。しかし、その内実は知られていない。本書は、イスラム、キリスト教、仏教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、神道などから、過激とされた宗教思想をとりあげ、わかりやすく解説。サイイド・クトゥブ、マルコムX、ジョン・ブラウン、井上日召、メイル・カハネらの思想を分析し、通底する「過激」の本質を明らかにする。

目次

はじめに 「イスラム過激思想」という造語への疑問
序章 宗教・過激に関わるいくつかの言葉
第1章 「アンチ西洋」ではくくれない―イスラム系過激思想
第2章 「弱き者のため」のエネルギーはどこから―キリスト教系過激思想
第3章 善悪二元論ではないのに―仏教系過激思想
第4章 ナショナリズムと鶏卵関係か―ユダヤ教・ヒンドゥー教・神道系過激思想
第5章 過激派と異端はどう違うか
終章 宗教的過激思想とは何か
おわりに 「宗教的過激思想」が照らし出すもの

著者等紹介

藤原聖子[フジワラサトコ]
1963年東京生まれ。86年東京大学文学部卒業、2001年シカゴ大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。東京大学大学院人文社会系研究科准教授などを経て、17年から同教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

117
過激で暴力的なテーマだけれど、流石に、宗教学の教授による整理は冷静で学術的である。イスラム原理主義だけなく、トマス・アクィナスの正戦論、ジョン・ブラウンらによるキリスト教過激主義、仏教の日蓮主義、ユダヤ教のカハネ主義など、どの宗教も思想内在的な過激性を有している。宗教的過激派を表現する語は、radicalではなくextremeなのだと言う。宗教が内在する過激性と、外部反応としての宗教テロとを区別して考えるべきと教えられる。その意味で、決して熱くならない、本書のような知的アプローチが大切なんだと実感する。2021/08/16

パトラッシュ

91
なぜ人は理想や正義を掲げる宗教や思想を求めるのか。連合赤軍やオウム事件を経験した立場では、まだそんな人間がいることが信じられない。美しいものを求める心情は理解できるが、それが流血や破壊の果てに達成できるとの主張に疑問を感じないのかと。それでも何かを信奉し、すがらねば生きていけないのが人が宗教の唱える理想のためテロを起こした数々の事例は、人の愚かさ不完全さを見せつける。しかし理想も正義もなく突き進んだ戦後日本には、三島由紀夫が危惧した通り金とセックスとグルメしか残らなかった。どちらが正しいか答えは見えない。2021/07/22

HANA

66
宗教が起こした事件を扱った一冊。前書きに「過激思想と呼ばれているものの「正体」をつかまえることにある。」とあるが、そちらは読んでいて全体的に漠として捕まえ難いかな。本書で一番面白いのは実際起きた事件を思想からとらえ直したサンプルケースだと思う。例えばジョン・ブラウンは本書で初めてその存在を知ったし、血盟団事件に関しても事件自体は知っていても井上日召の思想を知る機会はこれまで無かったし。ただチベット仏教の焼身をこの中に入れるのはどうかと思うし、安藤昌益は特殊すぎると思う。総じて教えられる事の多い良書だった。2021/06/03

ふみあき

35
宗教的過激派列伝といった風で面白かった。最初に紹介されるのは、ムスリム同胞団の理論家クトゥブ。その著書『道標』を紐解くと、狂信的なアジテーションが満載かと思いきや、むしろ西洋(あるいは日本の)左右の知識人が言いそうな近代主義批判が展開されている意外さ。一神教は好戦的、多神教は平和的、みたいな訳の分からない偏見も粉砕されていて痛快。日蓮宗の僧侶、井上日召による「血盟団事件」や、ヒンドゥー至上主義を唱える独立運動家サーヴァルカルによる、ムスリムやクリスチャンへの迫害を想起すれば、それが偏見に過ぎないのは自明。2021/05/30

まると

30
一神教・多神教の隔てなく、過激な宗教的事件を検証し、共通項を論じています。公正な社会を求める純粋で生真面目な人が教義に理想を見いだし、過激な行為に及ぶ(及ぼうとした)ということなのでしょう。理想社会の実現のため暴力も辞さない点では、革命思想にも通じています。最初のクトゥプとマルコムXの対比、カリフ制再興思想を論じた章が整理されていて勉強になりました。翻って日本では、自暴自棄になった人による私的な事件が目立ち、義憤に駆られた社会的事件は影を潜めています。良くも悪くも社会変革の力の衰えを感じずにいられません。2022/06/30

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