出版社内容情報
なぜ豊臣秀吉は検地を全国レベルで徹底して行ったのか。彼の最重要政策を再検討し、日本史の中に位置づける試み。検地の軌跡をたどることで、土地制度だけでなく社会構造をも変える狙いが見えてくる。
内容説明
豊臣(羽柴)秀吉が実施した政策、太閤検地。その革新性はどこにあるのか―。秀吉は、各地を征服するたび奉行を派遣し、検地を断行。全国の石高を数値で把握し、加増や減封、国替えを容易にすることで、統治権力を天下人に集約した。中央集権の成果は、のちに江戸幕府の支配基盤ともなる。本書は、太閤検地の実態を描き、単なる土地制度上の政策にとどまらず、日本の社会構造を大きく変えた意義を示す。
目次
序章 太閤検地と日本近世社会
第1章 織田政権下の羽柴領検地
第2章 「政権」としての基盤整備
第3章 国内統一と検地
第4章 大名領検地の諸相
第5章 「御前帳」「郡図」の調製
第6章 政権下の「在所」と「唐入り」
第7章 文禄検地の諸相
第8章 政権末期の慶長検地
終章 太閤検地の歴史的意義
著者等紹介
中野等[ナカノヒトシ]
1958年、福岡県嘉穂郡生まれ。1985年、九州大学大学院文学研究科博士後期課程中退。柳川古文書館学芸員、九州大学大学院比較社会文化研究院助教授を経て、2006年より同教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mitei
222
秀吉以前の検地と以後の検地の違いがよくわかる。全国統一ができて改めて検地も統一した方式になる事で、土地の収益がはっきりして鉢植え大名化が出来たというのは一種の標準化だな。京枡に統一するのは確かに当時のインフラでは大変だったろうな。2019/11/30
kk
25
日本史の授業で必ず習う太閤検地。その通時的な展開に追いながら、土地権利関係の整理といった徴租史的な側面よりも、寧ろ国制史・政治史的な側面に光を当てて意義を論じます。乃ち、近世封建制のビルディング・ブロックともいうべき村請制の確立、村切りを契機とする郡の再編成と国の実体化、一元的な石高制の成立による大名たちの「鉢植え」化の実現等など。豊臣氏による天下統一の、いつもとはちょっと違う角度からの考察として、たいへんな興味を覚えました。取っ付きやすい本ではないかもしれませんが、堅気で読み応えのあるナイスな一冊です。2021/05/04
みこ
19
気軽に手に取ってみたが結構学術的で読むのに手こずってしまった。清須会議、秀次事件、朝鮮出兵との絡みも多少あるものの、総じてストーリー性がないことが自称歴史オタの琴線に触れなかった原因かもしれない。でも実際天下統一って片っ端から敵をぶっ叩いて屈服させるだけじゃなくて、日本全土の土地を隅々まで調べ上げることなんだなと実感。「のぼうの城」で急落したままだった長束正家の株が再浮上。2019/11/03
MUNEKAZ
17
所謂「太閤検地」が一過性のものではなく、秀吉の治世で恒常的に行われ、試行錯誤を遂げてきたものだということがよくわかる一冊。とくに関白就任後は、「御前帳」として検地帳を天皇に捧げることにより、国家的なイベントへと昇華させている。また検地による農民との対峙ではなく、戦国乱世で錯綜した国郡の境界や村を再設定するという意識が強く、領地の定量化により、江戸時代まで続く大名の「鉢植え化」が為されることになる。地味そうなテーマながら、秀吉の画期性が伝わっておもしろい。おすすめ。2019/09/07
Toska
16
戦国大名が行っていた個々の領国での検地と太閤検地はどこが違うのか、何が画期となったのかに切り込んだ労作。新書というボリュームの中では非常によくバランスが取れており、読みやすさにも配慮されている。戦国期の騒乱がしばしば「境目相論」をきっかけに発生したのに対し、太閤検地はこれを防止する機能を持った。改めて秀吉の凄さがよく分かる。2023/04/22