出版社内容情報
流人の挙兵はなぜ成功し、鎌倉幕府はいかなる成立過程を辿ったのか。幾多の苦難を経て、武門における唯一の勝者となった波瀾の生涯。
元木泰雄[モトキヤスオ]
著・文・その他
内容説明
一一八〇年、源頼朝は平氏追討の兵を挙げた。平治の乱で清盛に敗れて、父義朝を失い、京から伊豆に流されて二十年が過ぎていた。苦難を経て仇敵平氏を滅ぼし、源氏一門内の対抗者たる義仲と義経を退け、最後の強敵平泉藤原氏を倒し、武門の頂点を極めた頼朝。流人の挙兵はなぜ成功し、鎌倉幕府はいかなる成立過程を辿ったのか。何度も死線をくぐり抜けた末に武士政権樹立を成し遂げ、五十三歳で急逝した波瀾の生涯。
目次
頼朝の登場―河内源氏の盛衰
流刑地の日々―頼朝挙兵の前提
挙兵の成功―流人の奇跡
義仲との対立―源氏嫡流をめぐって
頼朝軍の上洛―京・畿内の制圧
平氏追討―義経と範頼
義経挙兵と公武交渉―国地頭と廟堂改革
義経の滅亡と奥州合戦―唯一の官軍
頼朝上洛と後白河の死去―朝の大将軍
頼朝の晩年―権力の継承と「失政」
イノベーションとは何か?
指標で導く経営管理
著者等紹介
元木泰雄[モトキヤスオ]
1954年(昭和29年)、兵庫県に生まれる。京都大学文学部卒業、同大学大学院文学研究科博士課程指導認定退学。京都大学博士(文学)。京都大学総合人間学部助教授などを経て、同大学大学院人間・環境学研究科教授。専攻は中世前期政治史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばたやん@かみがた
52
一読して思うのは、頼朝の権力基盤の脆弱さである。一族累代の譜代的な者は少なく、乳母の実家(比企氏)や婚姻関係(北条氏)が頼みの綱であった彼は、院の権威等を借りながら敵対者や謀反した(とされた)者達の所領をニンジン代わりに東国武者達を絶えず糾合しなければならなかった。内乱においては対平家の第一人者と見なされていたが、義仲、甲斐源氏、奥州藤原氏等ライバルと競い合う存在であり、義経も何時それに転化するか判らなかったと言える。親族を中心に冷酷な姿勢を崩さなかったのも、その立場からやむを得ないものだったとしている。2019/04/27
翔亀
40
【中世5】新旧読み比べ。旧は1958年の永原慶二の岩波新書、61年後の2019年の本書で何が変わったか。冷酷で猜疑心が強いといった頼朝の性格から考えてはいけない、歴史的な状況から考えなければいけない、という点では全く同じなのが面白い。では歴史の見方は変わったのか。■両者の手法的な違いは明らかだ。旧著は社会の構造の変化から歴史を見るから、頼朝は王朝を倒すという革命を起こしながら最後は王朝と妥協した、という評価だった。一方、本書の特徴は、登場する人物の背景、それは親族・姻族の関係を、さまざまな史料により↓2022/02/19
みこ
28
本書の主人公は言うまでもなく頼朝。頼朝目線で治承・寿永の乱を見ると巷間伝えられる義経や後白河との確執が違ったものに見えている。というより、そもそも後白河とは対立すらしていなかったかもしれない。後白河の死後頼朝が将軍となって鎌倉幕府を開いたという錯覚が誤解の原因だろう。さらに、新政権を打ち立てたにも拘らず国家ビジョンが不鮮明であと数年生き永らえていたら世の中の在り方が変わっていたかもしれないという点が信長に類似していると感じた。2019/05/05
kk
23
義経の伝記は多いけど、頼朝の評伝は稀。自らは殆ど戦の庭に臨んでいないのと、肉親の切捨て等で冷酷なイメージが強く、また政治家特有の暗さ・地味さにより、面白い話にしにくいからか。「血湧き肉躍る」的なインスピレーションとは基本的に無縁。他方、中世史における存在感という点では、義経なんぞは及びもつかない巨星。政治家としての力量感も、本朝随一と言うべきか。本書は、そんな頼朝の足跡を堅気に実証的に記していく。読み物として面白いかどうかは何とも言えないが、頼朝の「意味」を改めて確認し直すという意味では良い本かな。2019/02/11
ごん
22
源頼朝は関東に武家政権を確立した人ですがあまり人気のない人です。この本を読んでも人気は上がることはないでしょうけど武士の世の中への流れを決定づけた日本史の最重要人物の1人です。この本を読むと頼朝でなけれは武士による継続的な政権の成立はなかっただろうと思います。(朝廷と交渉したり関東武士を束ねたり新たな統治機構を組織したりする政治能力が必要なので義経、義仲、他の源氏では無理ですね。)まあ、そうだとしても頼朝の人気がこの先上がることは多分ないでしょうけど。 でも、僕は意外と好きですけどね。2022/02/19