出版社内容情報
太公望や周公旦らが礎を築き、群雄割拠の春秋戦国時代の争いで滅んだ周王朝。孔子が理想とした周の実像を、金文や甲骨文から再現する。
内容説明
紀元前11世紀から前256年まで続いた古代中国の王朝である周。太公望や周公旦などの建国の功臣、孔子や老子といった諸子百家、斉の桓公ら春秋の五覇などが名高い。また、封建制や共和制など、周に由来するといわれる政治システムは多く、孔子ら儒家によって理想化されて伝えられてきた。では、その実態はいかなるものだったのか。近年、陸続と発掘される金文や甲骨文などの当時の史料から、王朝の実像を再現する。
目次
序章 新出史料から明らかになる周代の歴史
第1章 創業の時代―西周前半期1
第2章 周王朝の最盛期―西周前半期2
第3章 変わる礼制と政治体制―西周後半期1
第4章 暴君と権臣たち―西周後半期2
第5章 周室既に卑し―春秋期
第6章 継承と変容
終章 祀と戎の行方―戦国期以後
著者等紹介
佐藤信弥[サトウシンヤ]
1976年(昭和51年)兵庫県生まれ。関西学院大学大学院文学研究科博士課程後期課程単位取得退学。関西学院大学博士(歴史学)。専攻は中国殷周史。現在、立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所客員研究員、大阪府立大学客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
78
伝世文献に依存しがちな西周の歴史だが、近年新たに出現した金文や竹簡資料によって、より史実に近い歴史像が得られるようになった。だが人名の表現が文献と出土資料とで、余りに違っていて驚く。勃興から滅亡まで、800年もの隔たりがあると、伝承が古くても丸ごと信頼できないのも無理はない。われわれが鎌倉幕府のことをどれだけ知っているかに喩えてみればわかる。2019/01/27
巨峰
76
周、特に春秋戦国時代のことは宮城谷昌光さんの小説を沢山読んだわけで非常に興味深かった。この時代の話は史記などの史書だけじゃなくて、青銅器や甲骨文に彫られた同時代の文章が沢山残っていて、それを史書と照らし合わせながら研究できるというのが羨ましいと思った。日本の弥生・古墳時代も文字の彫られた出土品がもっと出てきたら、日本書紀などの研究もさらに進むだろうなと思う。文字に刻むということは、周の政治があまねく世界を・後世をも視野に入れながら行われていた証だろうなぁと。2018/10/18
かごむし
46
青銅器に鋳込まれた金文などを頼りに、周という時代をたどる。主に光が当たっているのは、周の創業から幽王の時代まで。則ち、史記などが俄然面白くなる春秋戦国時代になる前の周の時代。史記などで語り継がれている歴史を、実際のところはどうだったんだろうね、という視点で語られている。重層的であった。およそ3000年前のことが、ここまでわかるなんてすごいなあと思ったあとに、周王朝の骨格が見えてくるから、そのあとの春秋戦国時代が、諸侯とのつながりが見えてきて新しい風景になる。古代のことをロマンでは語らせない面白さがあった。2016/12/28
著者の生き様を学ぶ庵さん
45
西周の始まり(文王・武王・周公旦)から春秋・戦国の東周までのあやふやだった時代を埋めてくれる良書です。途中、斉・晋・鄭・中山国など懐かしい地名が出てきます。斉の太公望・桓公、晋の文公(重耳)・鄭の子産などの他、宮城谷昌光先生も登場します。著者はこれから大物学者になるかもしれません。2016/11/26
terve
33
やっと読了できました。周王朝といえば、春秋戦国がメインのように思われていて、前期がおまけという扱いだと筆者ははじめにで書いていました。しかし、封神演義や周公旦など、私にとっては前期がメインです。とはいえ、きちんとした歴史は知りませんでした。祭と祀をキーワードに青銅器文字を読み解きながら周王朝を紐解いていきます。非常に堅実な一書ではないでしょうか。2020/03/14