内容説明
シリアなどイスラム圏では紛争が続き、大量の難民が発生している。2015年9月、溺死した幼児の遺体写真をきっかけに、ドイツを中心に難民受け入れの輪が広がった。だが同年11月のパリ同時多発テロ事件をはじめ、欧州で難民・移民の関係した事件が続発。16年6月、EU離脱を決めたイギリス国民投票にも影響した。苦しむ難民を見過ごしてよいのか、だがこのままでは社会が壊れかねない。欧州の苦悩から日本は何を学ぶか。
目次
第1章 難民とは何か
第2章 揺れ動くイスラム圏
第3章 苦悩するEU
第4章 慎重な日本
第5章 漂流する世界
終章 解決の限界
著者等紹介
墓田桂[ハカタケイ]
1970年、富山県生まれ。フランス国立ナンシー第二大学より公法学博士(Docteur en Droit public、国際公法専攻)の学位取得。外務省勤務を経て、2005年より成蹊大学文学部国際文化学科にて教鞭を執る。2015年より同教授。アテネオ・デ・マニラ大学客員研究員、オックスフォード大学客員研究員、法務省難民審査参与員などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆかーん
62
UNHCRによると、難民の数は1548万人となり、シリアが攻撃されている現在、避難民はますます増え続けています。EUに流入する人たちが爆発的に増加すればするほど、非正規移動者は、滞留せざるおえない状況に追い込まれています。その影響で『難民から国家を守る』という意識へ変わってきたことも事実です。社会、環境、財政、など様々な苦悩が拡大する一方で、多文化主義によるイスラム問題も浮き彫りとなった現実…。拒絶する事も考えざるおえない状況に、EUの未来がどうなっていくのか、早急に真剣に考えなくてはいけないと思います。2017/04/23
masabi
39
【要旨】世界的な課題となった難民問題をイスラム圏、EU、日本から論じる。【感想】現実的な見地から難民問題を論じると解決の困難さが見え人道的正義感だけではいけないことがわかる。難民の受け入れが他国の内政を間接的にでも評価する行為になりうる、他国からの干渉の口実になりうるというのは初めての視点だったので読んでよかった。難民問題を論じるにも「善意の上限」や外交戦略、市民社会や地域自治体の負担など様々に言及するので、軽々しく難民の受け入れをとは言えないと思った。2017/02/28
おさむ
35
日本は1981年に難民条約に加入。これまでに人道配慮を含めて1万4530人の難民を受け入れてきた。国際的には少ないとの批判が多いが、認定審査にも関わった経験を持つ著者は、現実主義の立場から反論する。その上で、難民条約の適用の一時停止や撤退が安全保障上の観点からも必要だと訴える。たしかにEUで起きている混乱を見る限り、こうした意見は今後より強まっていくでしょう。2050年に世界の人口は97億人になると予想され、富める国の都市に人口は集中するという。なかなか理想論だけでは立ちいかなくなる事態が近づいています。2017/11/14
リキヨシオ
33
混迷するシリア情勢やシリア難民とEUのニュースは、難民受け入れに消極的な日本にとって遠い国の出来事だと思っていたけど、緊張状態のアメリカと北朝鮮が有事に発展した場合…多数の難民が発生する恐れがあるので他人事ではなくなっている。難民といえばシリア、アフガン、イラクというイメージが強い。しかし難民自体は紀元前から存在する…世界的に難民保護の動きが出たのは第一次大戦後と日が浅い。難民問題が身近になる中で難民問題と安全保障は単純に善と悪では語れない複雑な背景。綺麗事だけではない現実的な議論と政策が求められる。2017/04/19
かごむし
27
難民という現象にフォーカスを絞った本ではあるけれども、中東紛争に端を発するイスラム国の話題やパリのテロ事件などにつながり、現代を論ずる非常に読みでのある読書であった。日本は東の端にある遠い島国であって、難民がテーマになることはあまりないが、EU諸国は紛争国から陸続きにあり、難民問題に直面している。よく耳にする労働力としての移民受け入れという議論がいかに浅薄なものであるかと思う。しかし、難民たちは、EUでの受け入れが厳しくなれば、行くところがなくなるという話もあって、まさに地球的規模での問題なのだと思った。2016/11/04
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