内容説明
江戸時代は大災害が集中した、日本史上でも稀な時期である。江戸を焼き尽くした明暦の大火、富士山の大噴火、日本史上最大級の宝永地震、度重なる飢饉などの記憶は今も語り継がれている。一方、幕府や藩、地域社会、家の各レベルで人々が防災に取り組んだのも江戸時代に入ってからだった。いのちを守るシステムはいかに形成され、いかに機能しなくなったのか。災害と防災から見えてくる新たな江戸三百年史の試み。
目次
第1章 徳川日本の成立と災害(慶長期の災害;家光の「御代始め」と寛永の飢饉;災害と都市)
第2章 災害と「公共」空間の広がり(綱吉の登場と災害;享保の改革と災害)
第3章 「公共」をめぐるせめぎあい(宝暦期の状況;天明浅間山大噴火と天明の飢饉)
第4章 「徳川システム」の疲労(寛政期以降の地域社会;天保の飢饉と地域社会;安政の大地震と「世直り」願望)
著者等紹介
倉地克直[クラチカツナオ]
1949年(昭和24年)、愛知県に生まれる。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。岡山大学大学院社会文化科学研究科教授などを歴任。岡山大学名誉教授。専攻、日本近世史、民衆史、文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
64
江戸開府から明治維新まで、時の権力が如何に災害と向き合ってきたかを説いた一冊。こう通して見ると地震に噴火、飢饉に火事と、この列島が次から次へと災害に襲われている事が実感できる。現代で乗り越えられたのは飢饉くらいか。そして本書は単に何時どのような災害が起きたかという通史ではなく、再興の中心が幕府から藩へそして地方の有力者へと移り変わっていくのを丁寧に論じている。幕府も藩も対処はしっかりしているのだが、後年になるとシステムの疲弊が目立つなあ。江戸時代の災害を様々な角度から分析した、読み応え十分の一冊でした。2017/01/14
佐島楓
58
通史にかぶせるように実際に起こった災害が書かれているので、当時の世相や政治との関連性がわかりやすくなっている。地震や大水、飢饉にさらされるたびに成熟していく社会保障システム、また江戸末期におけるその衰退など、まとまった勉強ができた。現代の首都直下地震も本当に待ったなしだということもよくわかった。2016/08/01
rokoroko
18
江戸時代の災害の歴史と幕府や藩のそれに対する処置の仕方・・飢饉になるとわかると米を売らずにためて民が飢えない様にした藩。それぞれのありようが面白い2023/08/16
bapaksejahtera
17
江戸時代の三百年近い間、我が国を襲った災害と、これに対処した公儀(幕府を中心とする体制)の対処振りと、これに応ずる民衆の意識と行動を説く。冒頭江戸時代に3度繰り返した小氷期と小間氷期のセットが提示され、以下これに応じ繰返される気象災害、更に頻繁に襲来した地震と津波の被害を主に述べる。幕府が藩に分国支配を許す権力である「公儀」が、災害対応を通じ、次第に「公共」の性格を帯びる。それが経済の拡大につれ、公儀が村落や都市の民間力量に依存するようになると、「公共」の意識は民間にも波及する。現代人に警鐘を鳴らす著作。2024/03/13
HMax
14
江戸時代は戦争の無い平和な時代であっただけに、食料増産が進み、人口が増加した。これまで人が住まなかった/住めなかった所に人が住み、作物が育たなかった場所でも育てることが出来るようになった。 一方、そのため災害に弱くなり、気候変動や地震に弱くなったという事実は、現代に通じる問題と痛感します。ただ、あまり面白い本ではありませんでした。2016/07/13
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