内容説明
三七歳で自ら命を絶ったヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。彼の画家人生は、わずか一〇年あまりにすぎない。その短い歳月に、四〇点を超える自画像を遺した。なぜゴッホはこれほど多くの自画像を描き、そしてそこに何を見いだしたのか―。ゴッホ研究の第一人者が、その求道的な生涯とともに、自画像を一点ずつたどっていく。丹念な作品の読解によって浮かび上がる、新しいゴッホの世界。自画像全点カラー収録。
目次
1 牧者への夢―自画像以前の時代(「一本の道」―画家になるまで;畑を耕すように描く―エッテン、ハーグ、ヌエネン)
2 自問する絵画―自画像の時代(鏡に映らない自己を描く―パリ;日本の僧侶のように―アルル)
3 弱者としての自覚―自画像以降の時代(遠くへのまなざし―サン・レミ・ド・プロヴァンス;背景の肖像画へ―オーヴェル・シュル・オワーズ)
付 描かれたゴッホ
著者等紹介
木下長宏[キノシタナガヒロ]
1939年、滋賀県生まれ。同志社大学大学院文学研究科(哲学・哲学史専攻)修了。近代芸術思想史。京都芸術短期大学教授を経て、1998年より横浜国立大学人間科学部教授、2005年退職。私塾“土曜の午後のABC”を横浜で開設。著書『思想史としてのゴッホ』(學藝書林、1992、第43回芸術選奨文部大臣新人賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナイスネイチャ
118
図書館本。ゴッホ展があるということで。こんなに自画像があるとは驚きでした。自分を客観的に描き、理想のみを追い求め道を極めていく。自画像も素人の私でもわかるぐらいタッチの違いがあり、苦悩していたのか、道を模索していたのか非常に考えさせられる。2019/10/12
なおみ703♪
15
良書。手元に置きたくて購入。肖像画1点、1点を丁寧に検証している。ゴッホの椅子など自身を投影するものまでを肖像画として著者がとらえているので、全体的にはゴッホがその時何を探究してきたのか作品から探っていく内容となっている。ゴッホの手紙も多く引用されているが、あくまでも「絵」から、筆運びや色彩から探っている点が大変興味深かった。「1本の道」の絵が一貫してゴッホに底通しているようだ。道の先に神が存在する教会があること。形式的な教会でなくて貧民も迎えてくれる教会を望んだこと。狂気ではなく孤高の人だと思った。2020/11/28
彼岸花
6
自画像から花の絵へ。花のように生きる、心のかぎりを尽くすこと、が、ゴッホの生き方、遺言であることに、改めて感動しました。美術論は難しいですが、何か一つでも得られることができれば収穫だと思います。2018/04/23
中島直人
4
(図書館)画家が描いた自画像を辿ることで、彼の生き様を、これだけ系統立てて説明出来るのは凄い。著者のゴッホに対するのめり込み具合の深さを感じてしまう。2023/08/17
anzuzuzuu
2
ゴッホの描いた大量の自画像を元に、ゴッホの人生や精神世界を探っていく。 多くの自画像が載っているが、素人目に見ても初期と末期では描き方が全く違うことがわかる。画家としての自己に目覚め、自分という存在をどう描き出すか。発作が起きて施療院に移ってからは自分の内面を見つめる自画像になっていると著者は語る。 ゴッホは決して気が狂った人間なのではなく、痛いほど他人に優しい人だったんだろうなと思った。2021/11/26