内容説明
考古学調査と並び、邪馬台国論争の鍵を握るのが、「魏志倭人伝」(『三国志』東夷伝倭人の条)である。だが、『三国志』の世界観を理解せずに読み進めても、実像は遠のくばかりだ。なぜ倭人は入れ墨をしているのか、なぜ邪馬台国は中国の東南海上に描かれたのか、畿内と九州どちらにあったのか。『三国志』研究の第一人者が当時の国際情勢を踏まえて検証し、真の邪馬台国像に迫る。「魏志倭人伝」の全文と詳細な訳注を収録。
目次
第1章 倭人伝と邪馬台国論争
第2章 倭人伝の執筆意図
第3章 倭国を取り巻く国際関係
第4章 理念の邪馬台国
第5章 邪馬台国の真実
附章 魏志倭人伝訳注
著者等紹介
渡邉義浩[ワタナベヨシヒロ]
1962(昭和37)年、東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科修了。文学博士。現在、大東文化大学文学部教授。専門は中国古代史。三国志学会事務局長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kokada_jnet
29
「魏志倭人伝」の解釈の部分で、岡田英弘「倭国」と、どう違うのだろうという興味で読んだのだが。岡田の結論とほとんど同じであって、拍子抜けした。2020/02/03
mazda
25
邪馬台国九州説vs近畿説とか、正直どうでもいいかな、と思っています。そもそも外国の歴史書を使って自分の国の歴史を探るということに、無理があると思っているのは私だけでしょうか?一般的に、歴史書は時の権力者に都合のいい記述を並べていて、ましてや外国のことになると尚更都合のいいことしか書かないはずなので、それを真に受けてどこにあったと言って意味があるのだろうか、という気がします。日本の歴史書よりも古いものだから見ているかも知れませんが、内容についてはかなりバイアスがかかっていると思うのが自然でしょう。2018/01/25
はるわか
19
倭人伝は、陳寿の「三国志」が持つ偏向(司馬懿の功業を宣揚)を共有。陳寿は、司馬懿の遼東平定に伴い来貢した倭国を、孫呉の脅威たるべき東南の大国として好意的に描いた。蜀漢に対抗する大月氏国と同等の存在として、孫呉の背後にある倭国を大国と扱う曹魏の外交方針を、西晋も継承。倭人伝は理念と事実が入り混じる記録となった。邪馬台国論争が繰り広げれらた方位・距離の比定は、倭人伝の執筆者の理念に覆われている。倭人伝に記される邪馬台国は、九州でも大和でもなく、会稽郡東冶県(孫呉)の東方海上に「理念上」存在することになった。2018/05/27
to boy
18
中国古代史専門家が魏志倭人伝を読み解くことで邪馬台国の実像に迫ろうとするとてもまじめな著書。細かい解説は読み飛ばしても倭人伝が載っている三国志がなぜ書かれたのか、どういう背景、偏向を持って書かれたのかがよく分かった。当時の中国の中華思想の強烈な事とそれが現代にまで引き継がれいろんな情報が偏向されていることにも驚きと恐怖を感じた。2020/12/21
terve
15
『魏志倭人伝』は記述内容自体が誤っているわけではないが、そこには陳寿の思惑と当時の情勢が反映された、理念と事実が混在している。したがって、『魏志倭人伝』の成立条件を確認せずして古代日本を理解することはできない。というスタンスで書かれた本書ですが何しろ面白い。実は東夷伝は好意的に書かれていた点であったり、大月氏との釣り合いを取るために大きく書かれている点など興味が尽きません。ただ、書承のものでしかアプローチができない学問の難しさを思い知らされます。新資料の発掘が待たれます。2019/08/18