出版社内容情報
1883年10月、前代未聞の豪華列車がパリを出発した――複雑きわまる国境を超え、人々の夢と憧れをのせて走った列車の栄光と没落。
内容説明
一八八三年十月、オリエント急行第一号列車がパリ・ストラスブール駅をコンスタンティノープル目指して発車した。車窓には統一間もないドイツ帝国や世紀末の香り漂うウィーン、東欧の大平原、そして没落の色濃いオスマン帝国。鉄道の実用化から半世紀。複雑きわまる国際関係を超え、人々の夢と憧れを乗せた豪華列車が、時代の大衆化と航空機の登場によってその役割を終えるまでを通して描く、もう一つのヨーロッパ現代史。
目次
プロローグ 発車の日
第1部 開通記念列車(西ヨーロッパ快走―フランス・ドイツ・オーストリア;東ヨーロッパ―ハンガリー・ルーマニア・ブルガリア;オスマン帝国)
第2部 その後の「オリエント急行」(第一次黄金時代;二度の世界大戦を超えて)
エピローグ 観光列車としての「オリエント急行」
著者等紹介
平井正[ヒライタダシ]
1929年(昭和4年)、新潟市生まれ。東京大学文学部ドイツ文学科卒業。東京大学大学院独語独文学修士課程修了。東京工業大学教授、立教大学教授を務め、1995年に退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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蘭奢待
33
1800年代末期の古き良き時代のヨーロッパ。群雄割拠する皇帝、貴族たち。そんな国々を鉄道で貫き、豪華列車を設え、行き先はオリエント世界という、夢のような旅ができるオリエント鉄道が開通した。パリの都会から危険な東欧諸国を抜け、コンスタンチノープルへ(あくまでもイスタンブールではなく)。そこから先はイスラム世界のオスマン帝国。列車は豪華さを極め、寝台車、食堂車が連結され、車掌はコンシェルジュのように振る舞う。オリエント急行を主題としてヨーロッパの歴史、各国の関係などをまとめ上げる。良書である。2018/12/23
おらひらお
6
2007年初版。オリエント急行の歴史を周辺国の変遷とともにめぐる一冊。読みやすく、旅のお供にちょうど良い。2019/11/29
ちあき120809
4
オリエント急行の軌跡を、停車駅の歴史とともに辿る旅。「聖地巡礼」の性質しか持たなかった旅に「物見遊山」という性質を付与し、「巡礼地」を「観光地」へと転換させたワゴン・リー社。マケドニアの少女と叔父が「オリエント急行」の姿を見て、"叔父は「乗っているのは偉い人ばかりだ。この列車には金と権力が乗っている。しかし幸福は乗っていない」とつぶやいた。他方「オリエント急行」の乗客の方は、貧しい農婦がとぼとぼと歩く姿を窓外に見ても、気にもとめなかった。"というエピソードには"幸せとは何か"を考えさせられる。2019/12/20
rista99
3
1883年、パリからオスマン帝国のコンスタンティノープルまでを初運行した夢の超豪華寝台列車オリエント急行。ベルギーの実業家ナゲルマケールスの試みは画期的で、当時の西欧人の東方へのエキゾチックな憧れと相まり瞬く間に伝説的人気を博す。だが2つの世界大戦を経て鉄のカーテンが欧州を分断し、航空機が大衆化するとともに、その役割を終える。オリエント急行の歴史とともに語られる沿線の国々の歴史や文化に関する蘊蓄も非常に豊富で、やや「脱線」が過ぎる感もあるが、鉄道を切り口に19~20世紀のヨーロッパの近現代史を学べる好著。2021/08/16
yasu7777
2
★★★☆☆ 渋谷2713-462021/04/04
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- 和書
- 古本屋控え帖