内容説明
人類のおかれた状況が混迷の度を深め、希望と苦悩が錯綜している今日ほど、断片的な情報ではなく、深い考察が求められている時代はない。本書はまず、国際政治の起源を近代ヨーロッパにたずね、現代までの軌跡を追うことで、この基本的な性質を明らかにする。その上で安全保障、政治経済、価値意識という三つの角度から、差し迫る課題に人間が人間を統治する営みとしての政治がどう答えられるのか、的確な視座を提示する。
目次
序章 国際政治への問い
第1章 国際政治の来歴
第2章 安全保障の位相
第3章 政治経済の位相
第4章 価値意識の位相
結章 二十一世紀の国際政治と人間
著者等紹介
中西寛[ナカニシヒロシ]
1962年(昭和37年)、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。同大学院修士課程修了。88~90年、シカゴ大学歴史学部留学。国際政治学専攻。現在、京都大学大学院法学研究科教授
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感想・レビュー
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coolflat
9
今日の軍事力は国際政治の秩序の中で存在しその中で意義をもつものとなったと言う。18世紀のように軍事力によって一国の領土を攻撃から聖域化できるというのは幻想であって、重要なのは軍事的威嚇に屈せず簡単に既成事実を作られないような程度の抵抗力を担保する軍事力だと言う。ここで言う軍事力は相手に対して勝利する力はなくとも、攻撃を思いとどまらせる抑止力を言い、それを持つ事が国際政治の中で第三国からの支援を集める根拠ともなる。現代の軍事力は国際秩序の中でしか機能し得なく、また国際協調なくして軍事は成立し得ないのである。2015/05/17
ceskepivo
6
政治は人間の営みであり、それが国家間の政治、すなわち国際政治であっても変わらない。したがって、国際政治についても断片的な情報に振り回されることなく、深い洞察が必要である。2015/10/10
スズツキ
5
新書界で名著と名高い一作。あの『国際政治』を念頭におきながら、さらに一段上のレベルに達しているのではないか。一部の学校でテキストとして選択されているらしいが、最低限これだけでも読んでおくとおかしな論理には引っかからなくなると思う。2015/08/20
山のトンネル
4
やや難解な言い回しだが、15年以上前に書かれた国際政治の名著としての評価も。2022/04/05
まいける
4
高坂正堯氏に続くリアリズムの大家による名著。 国際政治とは主権国家体制、国際共同体、世界市民主義の3つの位相が混在したものであり、このトリレンマを認識した上で最善の選択を行う作業である。 その上で、平和構築のためには理想としての友愛よりも現実的な寛容の精神こそが肝要であるとする。 2020年現在、テクノロジーが更なる進歩を遂げ経済のグローバル化が進展した結果、世界市民どころか国際共同体すら後退し、ナショナリズムの時代に移行するとは誰も予測し得なかったのだろう。 今こそリアリズムによる対処が求められている。2020/01/03