内容説明
第二次世界大戦後、「パックス・アメリカーナ」は危機を迎える。ソ連との対立、ベトナム戦争の泥沼化でアメリカの国際的地位は著しく低下した。他方、国内では公民権運動、マイノリティの地位向上や女性解放の運動、ベトナム反戦運動など、社会変革を求める動きが活発化する―。冷戦終結により唯一の超大国となったアメリカは、どこへ向かおうとするのか。国内外の新たな試練にさらされる二〇世紀後半を描く。
目次
第6章 冷戦下の「黄金時代」―一九四〇年代後半~一九五〇年代(「アメリカの世紀」の到来か;「アメリカの世紀」を阻む世界情勢 ほか)
第7章 激動の時代―一九六〇年代(ケネディのニューフロンティア;冷戦とケネディ ほか)
第8章 保守の時代―一九七〇年代~一九八〇年代(一九六八年の選挙;ニクソンとプレスリー ほか)
第9章 文化戦争の世紀末―一九九〇年以降(多様化する人口;多文化主義と「アメリカの分裂」への危惧 ほか)
著者等紹介
有賀夏紀[アルガナツキ]
1944年(昭和19年)、東京都に生まれる。お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京大学大学院社会学研究科国際関係論博士課程単位修了。スタンフォード大学大学院修了(Ph.D.)。現在、埼玉大学教養学部教授。専攻、アメリカ史、アメリカ研究。『アメリカ・フェミニズムの社会史』で山川菊栄賞および日米友好基金賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
49
20年以上前の本ですが、とてもいい本でした。ロシアのエリア・スタディーズを専門にしたりして、アメリカというものに背を向けて生きてきたつもりでしたが、この本を読んでいるとレーガンあたりから私の記憶も明らかになってきて、思えば自分の生き方もアメリカ文明に規定されてきたな、と思います。例えば中学受験の講師のおっさんの声で蘇るイラン・コントラスキャンダルは、その後の中高時代に狂ったように読み続けてきた、舩戸与一などの冒険小説の発想のソースですし、思想的にも経済的にもアメリカと無縁でいられない事実に気づかされます。2024/02/24
読書ニスタ
43
1890年頃から、筆を興すこの上下巻、第二次世界大戦に本土をほぼ無傷でやり過ごしたアメリカは、パクスアメリカーナ、20世紀を我がもの顔で駆け抜ける。生活様式にしろ、人種、労働者、貧富の差、性の在り方、エンタメ、技術革新、メディアなど、争い事に勝つたびに強く拡大し、ベトナム戦争や日本との経済的な敗北に、大きく国力を落としはしたが、今日揺るぎない地位にある。とはいえ、それは100年程度の話でしかない。トランプ大統領のような、他国とぶつかり合う方が、アメリカの本質のようにも感じられた。2019/10/22
James Hayashi
32
アメリカのパワーを感じた。大統領が持つ権限、時代に即したリーダの現出、世界をリードする経済、反共産主義など世界の潮流を作り続け、多くの革新(革命)を為し続けるアメリカ。脅威であるが民衆の絶え間ない支え合いと変革へのチャレンジも感じた。2020/10/18
トムトム
17
黒人差別、共産党差別の赤狩り、ラテンの人たちの差別。最近も元大統領が「キリスト教徒で白人のアメリカ人が一番優秀」というような発言をして、「その通り!」と盛り上がるアメリカ人がたくさんいました。不思議な国です。2023/07/02
あんころもち
11
公民権運動から保革対立激化に至る歴史を詳細に叙述する。その白眉はその歴史から到達する20世紀末の「文化戦争」の記述である。アメリカには、WASP(伝統的白人)のアメリカとサラダボウルと例えられるアメリカがある。1980年以降激化した「文化戦争」(中絶、信教、人種などをめぐる保革の対立の激化)は、アメリカの位置付けをめぐる大きな揺れを生み出し、それは本書で指摘されるように事あるごとに噴出してきた。関係ないような事件にまで絡められる事もあった。2016/04/29