内容説明
かつては高度の神殿文化を生み出しながら、16世紀以来ラテン・アメリカは常に外部の世界に従属してきた。スペイン、ポルトガルの征服と植民地支配、イギリスはじめ列強の経済的支配、アメリカの政治的影響。独立後も独裁制から民主制へ、統制経済から自由経済へと激動が続く。ラテン・アメリカ諸国は共通の文化的伝統を基盤に、いかに苦悩の歴史と訣別し、自立と自己表現を達成するか。恐竜の時代から現代まで、長大なタイムスケールで描く。
目次
プロローグ 新世界
1 古代アメリカ人の世界
2 侵入者
3 事業家としての征服者
4 イベロアメリカの成立
5 16世紀の変動
6 成熟する植民地社会
7 反乱の世紀
8 自由な空間を求めて
9 開かれた空間における独立と従属
10 20世紀のラテン・アメリカ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
35
中公新書の『物語 ~の歴史』シリーズは概観をつかむのに適当で、本書もその例に漏れない。特に手薄になりがちな17世紀あたりのオランダの動きとか、ブラジルとイギリスの関係とか学ぶ点が多々あった。ただ気になる点も。それはアメリカ合衆国の扱い。ラテンアメリカ諸国独立はナポレオン戦争とその後のウィーン体制がきっかけだが、ここにアメリカの孤立主義が絡むはずだが記述がない。また、キューバとマフィアの関係、キューバ独立後のピッグス湾事件、チリでのCIAの動き、など色々やってることが全部捨象されている。著者の立場のせいか。2019/05/14
ハチアカデミー
25
B+ へたな小説よりも面白い、タイトル通りの一冊。現在のラテンアメリカの人々、国家の形の根底には西洋の文化がある。遙か昔からその地に住んでいた人々よりも、スペイン・ポルトガルをはじめとした西洋諸国からの移民たちによって、国も文化も作られている。もちろん、その西洋文化と、現地の風土や文化が混じり合うことで、いまある形となっている。文学における独裁者物のルーツであろう、実在の「ガウチョ」たちの活躍も楽しめる。また、昔から語り継がれたものではなく、移民たちが創りあげた「神話・伝説」も興味深い。目から鱗の一冊。2012/11/17
崩紫サロメ
24
ラテンアメリカの歴史を、アメリカ大陸の成立から、20世紀後半まで概説する。スペイン・ポルトガルの支配、独立運動など、具体的なエピソードが適度に盛り込まれており、興味深い。ただ、それだけらこそ、より詳しく知りたくなり、注釈や参考文献がついていないことが残念だった。著者はインカやアステカが専門であるが、フランス革命と呼応する独立運動の時代の記述もなかなか印象的。2020/06/09
ぷるいち
24
せっかく南米に旅行するので、多少なりとも勉強しようと思い読んだが、非常によくまとまっていてとても助かった。スペイン侵略以前の南米の歴史というとピンときていなかったが、この本である程度の骨子を理解できる。もっとも彼らが文字を持たぬ人々であったため、実際的にまだ色々と不明確な点はあるのだけれども。「ムラート」「メスティソ」、そして「ガチュピン」。ラテンアメリカ文学にも頻繁に出てくる言葉の奥行きを知ることができる。良書。2016/08/15
白義
23
かつて四大文明と並ぶ高度な文明を持ちながらヨーロッパからの征服者により支配されて以降、奇怪な怪人たちが独裁と反乱のドラマを彩る南米史。人類が定住する以前の先史時代から始めて現代まで一気に詰め込んでいてこれでも足りないという感はあるが読みごたえは十分。植民地時代からあくの強い統治者たちが本国と政治的にやりあい、独立後もカウディーヨと呼ばれる独裁ボスたちが乱舞し、現代にまで続く、昏い熱気を孕んだこの地域はやはり面白い。南米文学の奇想っぷりにも納得してしまうレベルだ2014/05/21