内容説明
七九年、ヴェスヴィオ山の大噴火によって火山灰の下に埋もれたポンペイの市街地には、競技場の塀、民家の壁など至る所に落書きが描かれている。文字を学び、記した人々は何を伝えようとしたのか。落書きの分析・解読を通じて、選挙運動に奔走する人、剣闘士の闘いに熱中する人、酒場で戯れる人など、様々な生活風景が姿を現す。ローマ帝国の下で繁栄をきわめたポンペイの実像に迫り、その社会と文化を言葉と文字の視点から捉える。
目次
第1章 友に、公職を!
第2章 公務にふさわしい人々
第3章 民衆は見世物を熱望する
第4章 喜怒哀楽の生活風景
第5章 愛欲の街角
第6章 文字を学ぶ
第7章 落書きのなかの読み書き能力
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つーこ
34
ポンペイ展に行く前に勉強しようと思って。ポンペイに関する書籍を調べたら、この人の本ばかり。ポンペイの文化に焦点を絞って、文字や落書きに関することが分かる。ものすごく昔の時代から、人間は人間らしく知恵と想像力を持って生きていたのだな〜。2022/03/21
ゆうゆうpanda
30
ポンペイの町に書かれた落書きから、当時の人々の様子を知ろうとする試み。政治家への推薦文が多いというのが特徴的。選挙ポスターに女性の露出度の高い写真を使う者まで現れた日本。民度で負けている気がするよ。2020/07/03
棕櫚木庵
23
1/3) 書店店頭で『古代ポンペイの日常生活: 「落書き」でよみがえるローマ人』(祥伝社新書, 2022)を見かけた.今,国内のあちこちを巡回中の「ポンペイ展」に因んだものだろうと手に取ってみたら,これの改訂版だった.1997年に買って大切に保管してあった(^^;).ポンペイ展もあるので読んでみたが,もう一つ印象が薄い.落書き主の職業や同業者組合の名があって,当時,どういう職業があったのか知る史料になるのだろうなんて思いはしたけども.2022/08/16
あきあかね
17
火山の火砕流に飲み込まれたポンペイの街では、建物や彫刻、絵画だけでなく、一万点以上ものグラフィティ、落書きも、タイムカプセルのように時を止められて遺った。意図的に将来に残そうとした文章ではない落書きは、かえって当時を生きた人びとの心のありようや息遣いを、生々しく克明に閉じ込めている。平穏な生活やささやかな幸せへの願いから痛快な罵詈雑言まで、今と変わらぬ普通の人びとの喜怒哀楽が感じられる。セネカの名文でなくとも、二千年の時を経て、生命を失わない言葉の持つ力に驚かされる。デジタル時代の言葉の寿命をふと思った。2022/09/29
の
5
ヴェスヴィオ火山の噴火により、遺跡がそのまま埋められた都市ポンペイの壁に書かれた落書きから、当時の社会情勢や文化を読み解いた著書。飲み屋の隅に書かれた「落書き」は勿論、選挙公約や競技場での勝敗表まで幅広く扱っていて、栄華を極めた都市の在り様が目の前にそのまま蘇ってくるようです。2010/08/10