内容説明
前の副将軍水戸光圀―日本人なら誰しらぬものもない史実と巷説に縁どられたこの人物の生きた時代は、泰平の世を謳歌する町人文化が華麗繚乱に絢を競ったときであった。なかでも食の世界は象徴的な展開をみせ、その奔流はあらゆる階層の人々を巻き込んでいく。光圀とても例外ではない。起伏に富んだ生涯のなかで、こよなく酒を愛し、味覚へのこだわりさえ感じさせる光圀の日々の暮らしは、近世食文化の黎明を如実に物語っている。
目次
食の為にあらず―食材収集
光圀誕生秘話―庶子から世子へ
反抗期に覚えた味―歌舞伎者の日々
黄門うどん―毎日がハレの日
元禄のラーメン―朱舜水がもたらしたもの
クジラとマンボウとアンコウと―長い海岸線のめぐみ
川尻たたき―季節のカツオ
那珂川のサケ―南限の美味〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アイナ
8
食通だった黄門さまの食卓。美味しそうな料理や食材が並びます。冒頭の黄門さまの生い立ちや遊女遊びの部分は、まるで「大奥」を観ているかのように楽しめました。日本は果物が豊富に採れるけれど、もともと日本固有なのは柿と梨だけであとは渡来品というのもびっくり。様々な食材を各地から取り寄せるにあたり、「身のためにあらず、日本のためを思う故也」というのは、のちの食文化に与えた影響を思うとその通りだったのかもしれません。2017/02/28
mahiro
5
若い頃は美男子で市井にに通じ吉原通いも一通りやったという黄門様、西山荘で悠々自適の生活をしながら自らも腕を振るって料理を作る、特にうどんや麺類が大好きという所に親しみを感じた。江戸時代前期には今我々の親しんでいる食材や料理が随分揃っている事が分かる。納豆汁うどの和え物冷や麦でんがくお茶漬けアンコウ汁、砂糖入り羊羹にくずきりきなこ餅、裕福で探求心旺盛な黄門様の食通ライフは楽しそうだ、大名の食事は毒味役などもっと不自由かと思っていた、隠居とはいっても何十人もの家来を侍らす所はやっぱり殿様だけど・・2017/11/23
にゃん吉
1
肉、魚、季節の野菜と豊かな食材。賑やかな酒宴。趣味で打ったうどんがふるまわれたり、朱舜水と交流し、ラーメンを食べてみたり。光圀の日々の生活は、優雅で、文化的で、牧歌的で、幕末の水戸藩の騒乱を思うと、何だか不思議な気がするくらい平和です。端々で、美味しそうだなとか、羨ましいなどと思いながら、読了しました。若い頃の光圀や、江戸期の食生活の一端も知れて、非常に面白い一冊でした。
-
- 和書
- 文化政策概論