内容説明
1890年4月、紀行文作家として来日したラフカディオ・ハーンは、松江中学へ英語教師として赴任し、そこに理想の異郷を見出した。しかし、その後、熊本で近代化の実態に触れて、彼の美しき日本像は崩壊する。本書は、他のお雇い外国人と異なり、帰るべき故郷を持たない彼が、神戸、東京と移り住むうちに、日本批判へ転ずることなく、次第に国家・民族意識を超越して、垣根のない文化の本質を目ざしてゆく様子を描く評伝である。
目次
第1章 ハーンの来日―西洋に背を向けた人(横浜到着;昔日の白昼夢;日本の印象)
第2章 松江のハーン―理想の異郷(「神々の国」出雲;英語教師として;城下町の生活;子供のイメージ)
第3章 熊本から神戸へ―振り子の時代(熊本の日々;日本文化論;日本への帰化;神々しき小世界)
第4章 晩年の結実―微粒子の世界像(英文学教授;「過去」を問う思索;微粒子の世界像;最後の夢)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
63
漂泊の前半生を送ったギリシャ生まれのラフカディオ・ハーンは40歳の時に松江に滞在して日本文化に魅せられ、日本人の妻を娶り最終的には日本に帰化した。出雲の風景に父の故郷アイルランドの記憶を蘇らせた彼も、急速に近代化を進める熊本には幻滅する。日本への共感と反感、愛着と幻滅を「振り子のように」味わった彼は、神戸から東京に移り東京帝大の教授となり、ロセッティやテニスンなど英文学を講義して感受性の鋭い帝大生の心を強く惹きつけた。有名な『怪談』が書かれたのは晩年のことだが、日本を舞台にしながら東洋でも西洋でもない→2025/12/21
さとうしん
15
ハーンの生涯と交友、その作品と思想について。妻のセツをはじめ、朝ドラ『ばけばけ』のモデルと思しき人物や事件についても触れられており、よい副読本になりそう。ハーンは当時お雇い外国人の立場から「日本通」として著名な存在だったようだが、一方で交友のあったチェンバレンとの論争、日本人女性との結婚や日本への帰化をめぐる他の外国人の視線、宣教師への非難などを見ると、どうも日本在住欧米人の中では浮いた存在だったようだ。2025/12/20
Gen Kato
1
はじめは日本を愛し、次いで失望し… 葛藤も苦悩もあったハーンの後半生。チェンバレンの悪評、許しがたいな。2015/09/15
vitaminless
0
本来大切な「感覚」を、僕は無くしているのかもな、と思いました。2009/12/19
カネコ
0
○2008/11/09




