内容説明
経済制裁とは、ある国の行った不当な行為に対し、経済の力をもって制裁を加え、その行為を阻止しようとする外交上の手段である。国際紛争解決の手段としての戦争行為が否定され、国家間の経済的相互依存関係が緊密化する今日、経済制裁のもつ意味は重要である。本書は、第一次世界大後の数々の事例を基に、経済制裁の様々な方法、効果を制限する要因、隠された目的などを分析し、経済大国日本が国際政治のうえで何ができるのか問う。
目次
序章 経済制裁とは
第1章 経済制裁の発展の歴史
第2章 経済制裁の実際
第3章 「事例研究」イランのアメリカ大使館占拠事件をめぐるアメリカの対イラン経済制裁
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
OjohmbonX
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経済制裁は、直接的な兵糧攻めではなく、物やサービスや金の流通を制限して流通コストを引き上げて相手国を弱体化させるか根を上げさせるという話で、流通コストが上がらないと制裁の効果がないから対象品や代替経路が条件になってくるという。後半で79年末のイランの米国大使館員人質事件を題材にして、アメリカが国際社会や国内にどういう根回しをして、各国がどう反応したり拒否したりして、どれくらいイランにダメージがあったのか具体的に経緯を追ってて、例えば一つでも具体例を知ると別のケースでそれ基準で比較して考えられるから助かる。2017/04/19
denken
2
どう考えても日本にとって無視しえない最重要問題の一角だと思うのだが,なぜこの分野の本は珍しいのだろう。新書としてはオンリーワンな気がするのだが。正直不満である。なんか面白くない。微妙に古い。イランに対して経済制裁を行う側として,さらには中国から経済制裁を被る身として,この言論界の寒々とした状況には怒髪天を衝くような思いである。帝国はそれでやられたのに。筆者には現在の経済制裁の状況を伝える意味でも,この分野における議論の足りなさを告発する意味でも,是非とも続編を執筆出版してもらいたい。2010/09/29
ryryryyyy
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少し古いが経済制裁の原理原則(成功要因、失敗要因、目的や手段)について事例を通じて学ぶことが出来る良書。本書で丸々一章使って紹介されるアメリカの対イラン制裁からもわかるように、様々な論点が密接に関わり合う国際政治から経済制裁のみを抽出して論じることは難しいが、30もの事例研究を通じてかくも抽象化することができた筆者の努力は並々ならぬものであったと想像できる。 2023/12/19
Tetsuya Noguchi
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昨今の国際政治において「経済制裁」の用語は氾濫している。にもかかわらず、それを国際政治の文脈で概説する書籍は、日本では非常に少ない。貴重な一冊である。 この本の内容は、1979年11月に発生した在テヘランの米大使館の外交官人質事件を中心的な材料にしたうえで、近現代の約30件の経済制裁を分析・整理して、経済制裁の効果を様々な観点から分析している。 今日のアメリカによる対イラン制裁を分析するうえでも、この書籍は、実に多くのヒントを与えてくれる。経済制裁に関する、日本の古典といえよう。2019/02/23