内容説明
徳一は奈良朝期、藤原仲麻呂の子として生れ、法相学者として世に立ち、伝教大師最澄の天台宗開祖にあたりこれを批判、論破。東国に赴して信仰元始再興を志し、東国の化主として長く景慕された―。本書は、わずかに伝えられるこの像を徹底的に検証し、徳一とはいかなる人物であったのか、天台・真言に抗して主張した彼の正義とは何であったのかを探るとともに、東国からの仏教史ひいては日本史を捉え直す、情熱溢れる試みである。
目次
1 徳一伝の基本
2 徳一出自の問題
3 徳一の呼び名
4 徳一伝の基礎
5 徳一東行伝の成立
6 平城勅願長谷寺伝説
7 恵日寺先―筑波山後
8 最澄から空海へ
9 筑波山徳一と入定説
10 磐梯山恵日寺
11 法相宗の大要
12 天台宗の要領
13 仏性抄と照権実鏡
14 中辺義鏡・慧日羽足と守護国界章
15 法華秀句
16 源信の論争整理
17 真言宗未決文
18 徳一・最澄・空海それから
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
15
本書の後に出た岩波の類似本を先に読んだが、私は本書が気に入った。陸奥の果から最澄空海に論争を挑んだ徳一は、それだけが歴史的存在根拠と扱われる。彼は若年で9世紀の後進地会津から布教の実を揚げ、菩薩と称された。本書は前半で限られた資料からその活動に合理的な推論を提示する。後半には三一権実論争を採上げ、徳一の原資料は失われたが、それが実に天竺支那の先師達の論争をなぞった物である事、後年源信による反論に見る所がある事を述べる。空海に寄せた「真言宗未決文」への反論がないまま後年天台側から反論が齎された事は興味深い。2024/05/30
みのくま
10
本書は激烈な最澄・空海中心史観へのアンチテーゼである。著者が東北出身である為バイアスもあるだろうが、本書を通読すると最澄は腰砕けで空海は世渡り上手なだけの坊主であり、徳一は東北布教の立派な「徳一菩薩」であるだけでなく、史料批判にも論理的思考にも秀でた大賢人という事となる。皮肉めいたが、最澄や空海との論争が五分五分であり、彼らと並ぶ偉人であった事は確かであろう。ただ、徳一開山の恵日寺や筑波山は天台・真言に乗っ取られ、後継者がいなかった為に天台・真言の後継者達に一方的に批判の的にされているのは非常に歯がゆい。2021/05/19




