内容説明
都市の発展により多くの野生鳥が姿を消したが、一方では環境に適応することによって積極的に都市に進出する鳥群が観察される。その頂点に君臨するのがカラス集団であり、いま都市にあってはカラスとヒトの知恵比べが熾烈に進行中なのである。本書は都市鳥研究会にあって長年、野鳥を観察研究してきた著者が、その成果を克明に報告するとともに、カラスに対する愛憎半ばする感情をさまざまな文献に探る、カラス百科である。
目次
序章 野鳥にとって都市とは何か
第1章 銀座のカラスはカァーと鳴く
第2章 ヒートアイランドの夜
第3章 カラスを追跡する
第4章 都会派カラスの子育て法
第5章 街中のスカベンジャー
第6章 カラスの知恵袋
第7章 カラスの遊戯
第8章 カラスと人の交友
第9章 カラスと人の知恵比べ
第10章 カラスの博物学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
318
1~5章までは、主として東京におけるカラスの生態調査報告。30年前とデータがいささか古いのは残念。当時で約7000羽とか。6章からはタイトル通りにカラスの賢さが語られるが、確かに想像以上だ。観察力、記憶力は人間の幼児を上回るだろう。また、貯食行動においても、生もの、パン、クルミ、それぞれの保存期間を考えて食べているらしいのだ。かつてホイジンガが人間を「ホモ・ルーデンス」(遊ぶヒト)と定義したが、カラスもさしずめ「フロレス=クロウ・ルーデンス」といえるくらいに遊ぶらしい。2017/10/14
はっせー
121
かなり面白かった! この本はカラスについて研究した学者さんの本である。この本を読む前はカラスのことをあんまり考えたことがなかった。だが、カラスについてのことを知ると驚きの連続であった。カラスが寝る場所は人が来ない森の中。都内なら明治神宮。確かに明治神宮は夜人の立ち入りがない。逆に代々木公園などは夜でも人がいるため寝床には適しない。カラスは想像している以上に臆病で慎重な動物であることがわかった。カラスは奥が深いと思った!2019/11/18
佐島楓
18
東京都心のカラスの行動から、生態、能力、神話にいたるまで幅広くフォローしている。古い本だが、私が鳥好きなので(繁殖期はちょっと恐怖ですが・・・)、興味深く読むことができた。カラスからすれば、人間のほうが縄張りを侵略していると思うのだろうけれども。2012/09/09
ミエル
11
久しぶりのカラス本、ようやく読了。カラス側は戦略を取ったつもりはないだろうけど、やはり適応力の高い生物は強い。これは人間も同じだけれど。2014/12/10
マリリン
10
隣人がカラスに餌を与え続けた為、早朝からの鳴き声や、カラス以外の野鳥まで飛んできて自宅のベランダが荒らされ飼っているインコが狙われた。鳥は賢い事は知っていたが、大変興味深く読み、遊び心まである事に驚いた。カラスの羽の黒い話から宗教や色々な話題は全く知らない部分が多かったが、黒い服が好きで飽きないのは黒に宗教性があるからなのか。 2017/11/26