内容説明
日本のような島国の住民は、日夜海から莫大な恩恵を受けているが、われわれはいったいどこまで海を支配する権利をもっているのだろうか。本書は“海洋国家”日本の国際環境をどう捉えればいいのかを、古代から現代のシーレーン問題に至るまで大きなスケールのもとに考察した、まったく新しい学問的成果である。
目次
第1章 島国日本(黒潮の流れとともに;水軍と倭寇;鎖国の意味;海軍の遺産;現代日本の海洋環境)
第2章 海洋自由の意味をめぐって(自由海と閉鎖海;グロティウスとセルデンの論争;英国海軍の功罪)
第3章 200カイリへの動き(第2次大戦の影響;制海の武器としての原潜;ソ連の海洋理論と戦略;200カイリの源流;国連海洋法会議への評価)
第4章 現代のシー・パワー論(海軍とは何か;現代の砲艦外交;現代の海戦と兵器;シーレーンの戦い;20世紀末の米国海軍)
第5章 海でしか生きられぬ日本人(太平洋の時代;日本のシーレーン再考;造船と海運の対策)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
竜王五代の人
2
1988年、ソ連崩壊三年前でいまだ大国扱いされていたころの本。英、ついで米のような大海軍国が自由に貿易できる海を自国と自派のために保持しようとし(ブリタニアは七つの海を制す)、ソ連のような国は自国の周囲に閉鎖的な領域を作ろうとする。日本のような中等海軍国は他国と連携して自由な海を守らねばならない(そのための哨戒空母と巡洋艦)。それとは別に、海底資源を利用できるようになって200カイリの経済水域の囲い込みの動きが起きた。2022/04/19
にゃん吉
2
古い本なので、ソ連の動向に関する記述が多いですが、領海、シーパワー、シーレーンなどの基本的な考え方が分かる一冊かと思いました。将来、経済水域に関して日本に起こり得る問題として、尖閣、竹島がふれられているのは興味深い。造船業の重要性、シェア低下への懸念が書かれていて、とうに世界一の座を譲り渡した現在ではどのような議論がなされているのだろうとか、本書に書かれていることをふまえて、現在の状況についても、色々考えてみたいと思った次第でした。 2019/01/02
call
2
海における国際関係についての本。まず、日本の海に関する歴史とそれに対する基本的態度を述べている。海の歴史を自由、領海、排他的経済水域などの点から述べている。次に現代(執筆当時という意味で)の海を舞台とした国際関係のアクターの振る舞いを論述している。最後に日本にもどって、これまでの議論を基に日本がどのような問題を抱えており、それに対してどうしていくべきなのかを述べている。一気読みしてしまったのであんまり整理できてないかもしれない。2017/07/19