感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小鈴
13
藩主も訪れる盛岡のとある庵の無方長老は、そうそう珍しい菓子がありますよと高麗ぐるみをだしてきた。大変博識なこの古老は南部に来る前は、はるか西の端、玄海に浮かぶ対馬島で、日本と朝鮮の外交文書を一手に扱う外交僧であった。秀吉による朝鮮出兵後、初めて漢城に行った僧であり、江戸時代では最初で最後の上京であった。玄方が南部へ流されるきっかけとなったのが一大国際事件「国書改竄」事件であった。事実なのに小説のように面白い。絶版なのがおしい。この本を読んだ上で大鎖国展の吉宗の時代の朝鮮との国書を見るとより感慨深い。2016/05/16
クサバナリスト
6
鈴木輝一郎著『国書偽造』を読んだ後、もう少し史実を知りたくて読んだ。柳川事件の結末を幕府の当時の外交論と絡ませた解説は、小説にはなかった謎解きとして興味が持てるものだった。2018/06/17
小谷野敦
5
近世初期の朝鮮外交における国書の改竄と、宗家と柳川家の闘争、幕府への暴露という知られざる事件を描いていて小説並みに面白い。なんでもっと有名じゃないんだろう。2024/11/04
tkm66
2
これは是非とも「復刻」希望!
韓信
1
中世より日朝交渉を担ってきた宗氏による国書の改竄、江戸時代初期に宗家とその重臣ながら幕閣昵懇の柳川氏の軋轢より生じた国書改竄の告発「柳川事件」の顛末を、先行する宗家の外交僧・玄方による朝鮮紀行も絡めてスリリングに解き明かす。幕府と宗家に両属し、主家を追い落として幕府直属への鞍替えをはかっていたと思しき柳川氏が、伝統的に日朝に両属して微妙なバランスで外交関係を維持してきた宗家に成り代われなかった結末は皮肉。後金による朝鮮侵略も含めた近世初期の東アジアの国際情勢とお家騒動を結び付けるダイナミックな視角も魅力的2021/05/16